実習研修(2)
宗平は目をそっと開けた。
目の前は白い世界。白いと言っても方眼紙の様な模様が周りにある。どうやら箱のようなとこにいるらしい。
宗平はすぐに他の班員が近くにいる事に気づく。
「みなさん、私の声聞こえますかー?」
聞き覚えのある可愛げと幼げのある声がどこからともなく聞こえた。
メアリー?
「全員の無事が確認できたから、実践演習始めるぞ」
こちらも聞き覚えのあるめんどくさい感じの声。五十嵐も同じ世界にいるようだ。
「確か夢空間は4人まででは?」
望月はこの世界にいる人数を数え、静かに五十嵐に聞いた。
「あぁここはDDN社が作った訓練所だ。仮想空間と言った方がわかりやすいか。」
「ありがとうございました」
「具体的には何をするんですか?」
宗平が手を挙げ訪ねた。
「そうだな、実践と言っているあたり察しもついているとは思うが、戦闘だ」
戦闘?
宗平は首を傾げた。そんな事を無視するかのように五十嵐は続けた。
「何も武器なしで戦闘はできない」
五十嵐は彼の前に浮遊している画面にスクロールをし、何かを押した。
「取り敢えず自分の想像した武器を出してみろ」
「想像するって言われても・・・」
宇佐美が思わず本音を漏らしいる中、色葉は集中力を高めていた。それを見て他の皆も目を瞑り瞑想した。
最初に武器を召喚したのは、意外にも望月だった。望月の前に現れたのは一丁のスナイパーライフルであった。
「ほう、初めての実体化にしては上出来だ。そうだな実際にあるKar98kに似てると言ったとこか」
「ありがとうございます」
望月は軽く会釈をした。少し彼らしくない笑顔が見えたのはだれも知らないだろう。
次に実体化に成功したのは色葉と宇佐美。ほぼ同時であった。
「色葉ちゃん相変わらず早いね」
「宇佐美さんも流石ですね」
2人の会話なんだが仰々しく聞こえる。笑ってはいるが、笑ってない。
「近衛の嬢様は日本刀か。兄さんも同じかね」
「教官殿、お言葉ですがそれ以上言われますと…」
色葉の顔は明らかに怒りで満たされているのが容易にわかる。
「悪かった。悪かった」
五十嵐は軽い感じで反省してなさそうである。
「んで、宇佐美は…。鎌?」
「はいー、てきとーに想像したら死神を連想して」
宇佐美は笑顔で答えた。
「死神って、、まぁ無理もないか」
五十嵐はなにか納得したかの様に頷いた。
「最後九条だが…」
宗平は集中力を高めていた。彼の前に光が集まってくるのがわかる。数多な光が一点に集まり、より一層の輝きを増していた。その光の一点から半径2、3センチに水平方向に光の輪が広がった。中心からなにかがでてくる。
ナイフ?
「タガーナイフか?」
五十嵐は光から出てきた2本の鋭利な刃物を見て言った。
「これを想像したのか?」
「いえ、わかりません」
宗平は無意識になぜタガーナイフを連想したのかわからなかった。宗平の受け応えで五十嵐の笑いが部屋に響いた。
「なんでまたタガーナイフなんだ。折角の夢なのに」
宗平は馬鹿にされていることには怒りそうだが、なんだかこの武器が自分に馴染んでいると両手で握りながら感じていた。
「まぁいい。それじゃ全員の武器実体化が確認できたとこで実戦に移ろうか」
五十嵐は笑いを無理やり止め、進行進めた。
「じゃメアリー頼んだ。コードネームは<<Judah>>」
「本当によろしいんですね。ユダはかなり危険かと・・・」
「あくまで仮想だろ。何かあれば俺が対処する」
「しかし、身体的ではなく精神的な面で・・・。」
「教官の言う事が聞けないと?」
メアリーの動揺がスピーカー越しでわかる。
「いえ、すみません。なんでもありません」
メアリーは少し躊躇った後、渋々言った。
「じゃ頼んだ」
五十嵐の声と共にサイレンの音が鳴った。
「コードネーム<<Judah>>を確認しました」
スピーカーから流れる電子音声が流れ、空気が張り詰めた。




