実践研修(1)
「さぁ一応これで仕事の概要は共有できたな」
班員全員が教官の顔を真面目に見る。
「まず・・・。 改めて夢のバグについてだが」
五十嵐が険しい顔をして、手を顎に当て考えていた。
「やっぱこう言う説明は俺に合っていないんだよなぁ。 百間は一見にしかずってか」
五十嵐は手元のマニュアルが書いてるであろう端末を机に置いた。
「取り敢えず、お前らには早速実践演習してもらおうか・・。 その方が早い」
皆キョトンとして突っ立ていたが、一つだけはっきりしていた。
嫌な予感がすると。
「おい、何ぼさっとしてる。準備しろ」
準備?
「DDNフルダイブ」
宗平たちは五十嵐の声に反応して、DDNの準備を始めた。
「これだから、最近の若い僧は・・・。なんだか、じじぃみたいなこと言ってるな」
また一人で五十嵐は呟いている。
宗平はDDNに触るのはこれが初めてだった・・はずだ。そう何故だが、機械の装着の仕方も手に取るようにわかる。まるで体に染み付いているように。実際、他の班員よりも早く準備は終わった。
「確か書類だとDDNが初めてだとあったが・・。 その手つきホントか?」
「えぇ、今回が初めてですが。 自分でもよくわかりません」
宗平はDDNへの違和感がどうしても拭えなかった。このもどかしい気持ちは一体・・・。
「まぁいい。全員準備が終わったようだな」
班員は放射線状に設置してあるアービター専用のDDNの機械に入り終わるのを五十嵐は見計らい言った。ただメアリーは他の班員と同じような準備ではなかったが。
「じゃメアリー、セットアップ頼んだぞ」
「承知しました」
可愛げある声はやはり幼女だ。メアリーはどうやら外部サポーター、技術スタッフとしての役割らしい。アメリカで博士号とったのは伊達ではないようだ。
「セットアップ中に一応最低限の注意事項は説明しとこう」
五十嵐は端末を手に取り話を続けた。
内容は以下の通りだ。
・夢内に入れる人数は最大で4人
・夢内の死=現実の脳死
・時間制限 8h ÷ 夢内の人数
・夢内の世界はクライアントに依存する
・アービター自身は自己脱出可能
「こんなとこか、何か質問あるか?」
五十嵐の質問にすぐに宇佐美が手を挙げた。
「夢の許容量4人を超えるとどーなるんですか?」
「クライアントの脳に損傷が出る」
「いっけね。大事なこと忘れてた」
五十嵐はその質問で何かを思い出したように端末を見返した。
「一応アービターは最低限度制約はある。例えば今のようにクライアントに損傷が出るようなことをしてはいけないこととか、プライバシーの保護の為に夢の中での情報を口外しない。ざっとそんなとこだ。まぁ当たり前だろ?」
五十嵐のそう皆に問いかけた。
班員は全員頷いた。
「準備できました」
メアリーの合図が部屋に備え付けてあるスピーカーから聞こえた。メアリー、技術スタッフは隣の部屋で待機している。ガラスで出来ている為こちらから見ることもできるが、皆DDN装着のため見えない。
「まぁこれはあくまで模擬空間だ。気らk・・・」
五十嵐の声を最後まで聞くことなく深い眠りについた。
これが人工的に夢を見る感覚。




