新人アービター(5)
「命を伴う警備?」
宗平は驚いた。当然だ。
「シルヴィアから何か説明はなかったか?」
「いいや、全く言われませんでした」
五十嵐の大きなため息が聞こえた。
それから宗平は五十嵐から仕事内容を聞いた。それは夢の警備、通称<<アービター>>と呼ばれる仕事であった。近年のDDN人口(DDNに入っている人)が急激に増えた事によって稀にクライアントの夢にバグが生じてしまうことがある。アービターを大雑把に説明すれば、それらバグを対処する為の仕事である。
しかし宗平の中に一つの疑問が生まれた。
「一つ質問しても良いですか?」
「おう、なんだ?」
「バグの対処というのはプログラマーやらそれに類似した仕事では?」
「あぁまさにそうだ。従来までではな」
「従来?」
「昔からバグはよく発生していた。があくまでそれはコンピューターシステム上のバグ」
「今のバグはそれらとは違うと?」
「あぁ違う。夢のバグだ」
「夢のバグ?」
「そう我々は呼んでいる。コンピューター上では正常でも夢の中でバグが発生している。その原因は・・・ 未だ不明だ。あくまで推測ではあるが長期DDN使用に関係があるのではないかと踏んでいる」
「つまり今から夢の警備をするってことですか?」
「あぁ」
「全然死ぬような仕事には思えないのですが」
「もちろん肉体的に死ぬわけじゃーない。死ぬのは心だよ」
「つまりなんらかで夢の中で死ぬことで現実に戻れない、植物人間になるということでしょうか?」
「妙に物分りがいいな。まさにそうだ」
宗平少し黙って考えた。なぜだかこのアービターの仕事に委細承知であることに気づいた。どこかで・・・。
いや、思い出せない。
「それで、九条。お前はこの仕事をやるか。一応拒否すれば記憶操作はさせてもらうが拒否権はある」
「いや、やります」
「さっきまでの驚きがどこにいったのやら。まぁいい」




