妹の病気(3)
「それじゃあ、また明日ね。詳しいのは昨日来たメールでも読んで」
シルヴィアはふらりと立ち、公園を出て行った。それもスキップしながら。
ほんとにシルヴィアなのか?
「病室戻らなきゃ」
宗平は足早に病院へ向かった。
瑞稀の病室を入った辺りでピリピリした空気が漂っていた。
「み、瑞稀?」
返事が無い。もう一度呼ぶが返事が無い。
「おい大丈夫か!!」
宗平は脳裏に医者から告げられた余命の話を思い出した。
「ばぁ」
不抜けた少女の声がした。
「お兄ちゃん騙されたー」
無邪気な笑いが2人以外いない病室中に広がった。宗平はなにも反応できない。
「どうしたのお兄ちゃん。いつもだったらすぐドッキリってわかるのに」
「いや、今のは…ほんとにびっくりした」
宗平は何事もなかったことにほっと息ついた。
「まぁドッキリはどうでもよくて、さっき一緒にいた女の人誰?」
宗平は鳩が豆鉄砲で打たれたかのような顔をした。
「あーシルヴィアね。仕事仲間になる人」
「ふーん、仕事仲間なる人なのに呼び捨てするくらい仲がいいのね」
「いや、別にそう言うのじゃなくて」
瑞稀は窓の方を見て拗ねてしまった。怒っていないとは思うが。色恋話に敏感なのは年頃の性なのかそれともずっと病院暮らしの性なのか。後者であれば気の毒でしかない。
いやただの嫉妬か
「お兄ちゃん明日の準備しに家に一回戻るけどなにか買ってきて欲しいものある?」
「いいよ、お兄ちゃん病院戻ってこなくて」
「え?」
「瑞稀、一人になりたいの」
「なにかあったのか?」
「いや、それは言えない」
「おいおいお兄ちゃんに隠し事か?いけないなぁ」
「ゲームよ」
瑞稀は手にゲームのコントローラーを操作する仕草をした。
「なんでゲームするのに一人じゃなきゃいけないんだ?」
「なんでもいいから。ほら帰った帰った」
「変なやつ。じゃ帰りますよ」
宗平は瑞稀に催促されたが、何度も振り返りながらも病室を出ていった。
瑞稀ってゲーム嫌いじゃなかったっけ?
瑞稀は宗平が病院から出たのを窓から見ていた。
「隠し事してるのは、お兄ちゃんの方じゃない」
瑞稀は一言呟き、泣き出した。いままで溜めていた全てを流すかの様に。彼女の泣く声は一晩中続いた事など兄は知らないだろう。知ってほしくない方が正解か。
朝日が泣き終えた少女の顔の雫を照らしていた。




