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78.拷問と秘薬

振り返ると時すでに遅し、そこには口元をヒクヒクさせ引きつった顔をした【赤月の護り】の面々がいた。

不幸中の幸いか、フィーネは戦闘に巻き込まれないように後方の商隊のテントまで下がって貰っていた訳だが……。


「いや〜僕が狙われていたみたいですね。ご迷惑お掛けしました」

はははーと言っては見るものの硬直した5人には通じず。


ピロン!

ピロン!

ピロン!


頭に効果音が虚しく響く。


「えーっとシャウさん?一応終わりましたので、戻りません?」


「いや… いやいやいやいや。タカヤくん?キミの回復薬 えっ?えっ?」


ん?どうやらフリーズしている理由がおかしい?回復薬?拷問に引いてるんじゃなくて?

あれ?感覚がおかしいのか?

そこは拷問に引くでしょう…この世界では違うのか?僕の感覚がおかしいのかのか?

眉間のシワを指先で摘みながら、思考を巡らすも一切理解出来ない。


「えーと 回復薬ですか?拷問したことにみなさん驚いているんじゃないんですか?」

いくら考えても答えが出ないなら聞いてしまおう。多分僕がズレてる。今後の為にここは修正すべきだろう。


「拷問?そんなの黒幕ってんなら当然するだろ。なんだったら2体満足位でお帰り願うな。 なぁ?」

シャウさんからの問いかけにパーティの面々それぞれが首を縦に何回も振り頷くなか、斥候職のユニーさんが硬直から抜け出し前のめりに肩を掴んだ。


「ねぇ ねぇ ねぇ 何?あの回復薬!くっついたよ!骨も肉も皮膚も!一瞬で血が止まったよ!生えたよ!ねぇ ねぇ ねぇ エリクサー?万能薬?最高級ポーション?」

「そっそうだ 回復魔法の最高位でもあんなに早く治せぬぞ どういう事だタカヤ殿!」


ユニーさんに加えピータさんも加わる。

どうやらポシル印のポーションの回復力は伝説の薬並まで昇華しているらしいです。そういえば前は5分以内の欠損なら治る薬ならっていってたけどやっぱり伝説級だったか!ポシルさんグッジョブ!

心の中でポシルを大絶賛しながら、念話を送る。ポシルも嬉しそうに肩の上でクネクネと踊っている。人型だったら間違えなく両手で頬を挟んでいやいやポーズをしているだろう。

そんなかわいいポシルを見ながら、頭の中でどうしようかとこの状況を整理する。


今回5人は、拷問が始まった段階では自分達も何か手伝えるんじゃないかと思い近づいた。しかし始まってみればチョッキンしたらすぐに話し始めてしまった為、手伝おうモードから傍観モードに入っていた。


そこで目にしたのは信じられない光景。

カットした指につけるだけで皮下組織が盛り上がり止まる血。折れた指や腕、千切れた諸々の部位が瞬間的に治っていく光景。極め付けにはカットした指を付けて液体をかければ何事もなかったかのような綺麗になる損傷部位。


彼らも長く冒険者をやっている。もちろんダンジョンにも潜っている。そこで聞く伝説。

どんな傷でも一瞬で治す薬。どんな怪我も治す薬。そして失った損傷部位が元に戻る薬。

冒険者なら誰でも憧れるダンジョンに眠る秘宝や霊薬。


そんな伝説の薬が拷問のついでに使われる異常な光景。

目を疑った。幻かとお互いで殴りあった。秘蔵の混乱を回復させるメンタルポーションも使った。

夢ではなかった。精神異常でもなかった。現実だった。

だから動けなくなった…。


そこから回復してからが大変だった。

テンパるシャウさん。後ろから肩を掴んでくるユニーさん。そして魔法でもあり得ないと顔を近づけるピータさん。

ガイファさんとクオさんはタンクの剛力任せにお互いを殴った衝撃でクロスカウンターの状態のまま片膝を地面に付き痛みに耐えていた。


「あ〜 あ〜 あ〜 ユニーさんそんなに揺らしたら喋れないです。ピータさん顔近いです。っていうか揺れに合わせて鼻くっついてます〜」


背中側からユニーさんに肩を掴み前後に揺らされ、ピータさんと鼻キスをする。はっきり言って気持ち悪い…。

必死の訴えにやっとの事で離れてくれた2人を落ち着かせストーリーを紡ぐ。もちろん正直には言わないし言えない。


「これは世界樹の亜種。聖樹の溜まり水です。前にエルフの一族を助けた事があって頂いた物です。世界樹の枝を分けて植樹して育てたものが聖樹です。その木の割れ目?に溜まった水は浄化されて秘薬になります。それを貰いました。ちなみに後3日程で効力が切れるので、皆さんも使いますか?古い傷じゃなければ治りますよ」


これが僕の考えたストーリーだ。この世界のイヘラーグ大陸には世界樹が存在する。各大陸各国に散らばったエルフ達は深い森に結界を張り住んでいる。その際結界の力を増す為に植樹されるのが世界樹の枝と言われている。

その枝を植え、エルフ達が術を唱えると20m程の高さに成長し、聖樹となる。

ここまでは伝記を読んだ際に書かれていた。秘薬云々は創作だ。まぁバレないはずだけど…。


「聖樹の秘薬…」

「どんな怪我も治す…」

「エルフの伝承は本当だったのか… 聖樹の枝で杖を…。」

「「……………」」


一人怪しい妄想に取り憑かれているが、そこは魔術師の性なのだろう。そりゃあ世界樹やら聖樹なんて物で杖を作れば強力な杖ができそうだし。

呆然としている5人をよそ目に指先にポシル印のポーションを付け、痛みに震えるガイファさんとクオさんの頬にちょんちょんとポーションをつける。

事態が収拾出来るまでもう少しかかりそうだ。


その間に心のメモにちゃんと書き込もう。

➖ポシル印のポーションは人前で余り使わない!拷問はOK!➖

最近ゆっくり執筆出来る時間がとれず、更新遅れています。

それでも次話は必ずあります!応援よろしくお願いします。

レビューや評価、感想(応援)は本当に励みになります。よければ是非お願いします。

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物語の精査の合間に書いた小説を新作として公開致しました。
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迷宮都市の料理人
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