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77.正直狐とうっかり者

「なんだと?何故だ…俺の事を知っているのか」


目を見開き驚きの表情を見せるが、すでに隠すとかそう言うのはもういいらしい。俺の事知っていたとか言っちゃうし。

動揺しすぎでしょ。まぁいいかそれならば話を合わせた方が楽そうだね。


「えぇ ダイナム商会のネイルさんでしょ?誰ですかサイモンって」

くくくっと態とらしく笑う僕に青筋を立て怒りを露わにするが、既に芋虫の様に拘束されてもがく様は笑うしかない。


「さてネイルさん。これは僕に対しての宣戦布告と見て良いですかね。もうしかしてスラムでウロついていたのってネイルさんですか?大方例の取引で納得いかないダイナムのおっさんがセコセコ裏で動いてたんでしょ?」


例の取引とは、もちろん以前盗賊討伐した際の買取金額の上増し要求の件だ。

その日の取引は成立せず、結局ダイナム商会の商品は秘密裏にその日のダイナムの前に取引を終えた小人族のピフサさんに、適正価格で買い取って貰った。


「スラムだと?なんのことだ。確かに私はダイナム商会のネイルだが、今回お前とはなんの関係もない。こやつら亜人の傭兵をスカウトするために見張っていたにすぎん!」


「亜人ねぇ ネイルさんもう一度聞きますね。ちなみにですが正直に言うチャンスはこれが最後です。この後は……そうですね。ネイルさんが想像できるもしくは今迄に行った一番悲惨な拷問を思い浮かべてください」


「はいっ!そこまで!」

手をパンと叩き、ネイルの目を見て最高の笑顔を向ける。


「今想像して貰った拷問なんてお遊びです。ゴッコです。いいですか僕は調薬によってできた強力な回復薬が使えます(ポシルのポーションだけどね)なのでネイルさんは何をされても死ねません。正直に洗いざらい話すまで様々な刺激をプレゼントします。あと僕はスキルで嘘か本当かがわかります(そんなスキルはないけどね)」


威圧をかけ、笑顔のままネイルの目をまっすぐ見ながら言葉を続ける。ネイルの顔は既に真っ青になり、全身から脂汗が滴り落ちこれから自身の身に起こる事を唯一動く首を激しく横に振り否定し続けていた。


「それじゃあ始めましょうか」


「あ あ あぁーーー!!!!」


数分後


目の前には白髪になり、老人の様になった腕や足のない達磨状態のネイルの姿があった…。





という事もなく、髪は黒髪のままだが少々やんちゃしすぎた結果憔悴しきったネイルがぐったりと頭を垂れていた。

さすがに洗いざらい喋って貰うのに、悲鳴や叫び声だけじゃ前に進まない。多少は切ったり貼ったり幻覚を見せたりしたが、達磨状態にはなっていないし、ポシル印のポーションのおかげで五体満足だ。


ネイル君は実に正直者で、冒頭指をちょっとカットしたら本気度が伝わった様で少しずつ話してくれた。その後憂さを晴らすためやんちゃをしたが、もちろん最後には指も元どおりだ。

そしてやはりネイルは、ダイナム商会に雇われた偵察者だった。

例の取引の後、激昂したダイナムが商会の幹部を集め僕の周囲を探る様に命じた。しかしすぐに気配を消す僕たちを捉え切ることができず

直接ではなく地道な聞き込みの結果、僕が完全なソロである事、身寄りや人質に取れる様な相手が居ない事がわかり、傭兵に処分と溜め込んだ財産の場所を吐かせ、根こそぎ奪う事にした。

今回このタイミングを狙った理由は、直接狙えばダイナム商会が疑われる恐れがあるため、商会を襲う振りをし処分しようとしていた。


「それではネイル君。正直者のあなたを解放しましょう」


そう笑顔で言った後のネイルの絶望の顔はそのまま彼の将来を暗示しているかの様だった。

「ダイナムに伝えてくれるかい。宣戦布告は確かに受け取った。今後どこで命を狙われるか。まずはお前の商会を潰すせいぜい頑張って逃げまわれよってね」


ネイルの拘束を解除し、町の方向へと解放する。斥候とは思えない重い足取りで歩き出すネイルを見送りながらイーグラへと目を向ける。


「さてイーグラさん。僕とあなたの関係は雇われた者とそのターゲットだ。でもあなたは返り討ちにあった。つまりは任務失敗だ。殺されても文句は言えない。そうでしょう?」


「たしかにそうだ。殺されても文句は言えない。こちらの責任だ。殺すがいい」


「そんな事はしないよ。これから負けた貴方への権利を行使します。ネイルを町まで送ってください。町の近くまででいいです。

このままではダイナムに会う前に死にそうです彼…。」


どう考えても、これから2日はかかる道のりをあのペースで行かれたら、魔物に襲われて死ぬ。そしてイーグラは戦士として負けを認めた以上、今回も命令に対しては裏切る事はないだろう。


そう言うと、ユニーさんの弓で留めを刺されなかった瀕死のロックリザードを、イーグラと共に回復させる。これなら町まではなんとか着くだろう。2人と1匹を送り出しスッキリしたところで、後ろを振り返る。


そこには口を開け引き気味でこちらを見る「赤月の護り」の面々がいた。


あっ忘れてた……。



いつも読んで頂き有難うございます。

これからもよろしくお願いします。

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物語の精査の合間に書いた小説を新作として公開致しました。
ぜひこちらもよろしくお願いします。

迷宮都市の料理人
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