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59.Xとジャル

本日2話目の投稿です。

主人公側ではない。ストーリーとなっています。

グロ表現があります。苦手な方は読み飛ばして後書きをお読みください。

ーside 【X】ー


「クッカカ。あーうまい。最高だ。やはりこのレベル帯の食事が一番うまい。あー。淀みなく力が満ちていく」


時刻は1鐘を回ったところ。

青い月が完全に姿を消し、赤い小さな月が不気味な程の色を放ち、真夜中の街を赤く染める。


街の外れ、そんな赤い光も届かぬ程にあばら家が入り組み建ち並ぶスラムに、程近い人気のない真っ暗な路地裏に、1つの惨殺死体が横たわる。


服を剥ぎ取られ身元も分からぬほどに、原型を留めないその死体は、僅かに残った体の一部から年頃の少女の物だと推測できる。


暗がりに潜むその怪しい人影は、惨殺したその体を、飲むようにして大きく開けた口から腹に届ける。


「は〜。やっちまった。またつい我慢ができなくなっちまった。」

ボリボリと、血のついた手で頭を掻き毟り、足元の血だまりに向かい面倒臭気に心情を吐露する。


「全く面倒くせえ女だ。どこまでも付いて来ようとしやがるせいで、満足に食事も出来やしなかった。そのせいで、こいつが育つまで、食事をある程度我慢しなきゃいけなくなったのは、最悪だったな。お前がもうちっとちゃんと躾けてればよかったんだ。」


口元を拭い、闇に向かい悪態を吐きながら、殺した女の不満を呟く。


しかし、その顔は力に酔いしれまさに恍惚の表情を浮かべていた。



ーside 衛兵【ジャル】ー


「億劫だ。死にたい」

覇気もなく、やる気もなくつらつらと歩きながら1人の衛兵が見回りを行う。


本来2人1組での見回りを、サボりたい一心で相方に効率が良いからと途中で別れサボれる場所を求め彷徨っていた。


「だいたい。ボンズ兵長とケーゼ副長が余計な事をしたせいで緩かった規律が変に厳しくなっちまったんだ」


やってらんねぇよ。

とだらだらと路地裏に向かい、見回りと言う名の徘徊を続ける。


ジャルは元々先日の衛兵一斉取締でも、問題なしとされていた。


彼自身、衛兵の汚い部分は知っていたが、基本ジャル本人は無気力なだけで、悪事に手を染めるほどの器量は持ち合わせていなかった。


ただ平和なこの街で、少しでも高い給金を求めた結果。

多少心得のあった槍術が認められ、衛兵として毎日を過ごしてた。


だからこそ、外部から監視の目が光るこの現状が、鬱陶しくてたまらなかった。


そんな事を思いながら路地裏に差し掛かる。

相変わらず下を向きだらだら歩いていると、急に石畳が映るその視界が、赤一色となった。


「ひ〜ぃ!」

奇声を上げ後ろに勢いよく後ずさり尻餅をつくが、その痛さなど気にも出来ない光景が目の前に広がっていた。


血 血 血 血


辺り一面の血の海。

その中に、人間の物と思われる肉片や骨など硬い部分がカケラのみ散らばっており、野犬に食い荒らされたような状態となっていた。


「だ だれか 誰かー」

あまりにも凄惨な状況に、だらけていた気持ちなど一切吹き飛び4つんばになって駆け出し、自分でも信じられないくらいの速度で衛兵本部の置いてある宿舎に向かう。


「報告します」


宿舎前で、一応息を整え普段と違い背筋を伸ばし、はっきりした口調で報告をあげるための第一声を上げた。


急な事で一瞬取り乱しはしたが、彼も衛兵。

あのような血だまりならば何度か経験している。


本部に着くまでにはしっかりと落ち着きを取り戻し、上官である現衛兵長に敬礼する。


そこには先程の猫背の覇気のない青年ではなく、背筋を伸ばし、短髪に切りそろえた水色の髪をし、覇気のある細めの目を真っ直ぐに向け、槍を携える立派な衛兵の姿があった。


「報告します。スラム街からほど近い路地裏にて見回りを実施。その際路地裏にて人の可能性が極めて高い血だまりと体の一部を発見。同時に人の足跡もある事から、殺人と思われます」


冷静になった頭で、見た光景を思い出しできる限り正確に状況を報告する。


確かにあの血溜まりには足跡も存在していた。それも野犬や動物ではなく、はっきりと人の足跡だとわかる靴底の跡が残されていた。


そして、同時にここ数ヶ月で起きている冒険者惨殺事件に非常に類似している事を、ジャルは感じていた。


暗闇に潜む怪しい影。少女を殺害し力に変える。

闇の中の誰かと話すその顔はまさに恍惚の表情を浮かべていた。


やる気のない衛兵ジャル。サボり目的に訪れた路地裏には凄惨な殺人現場が広がっていた。

やる気を取り戻し報告をあげるジャルは、ここ最近起きている冒険者惨殺事件との関連を想像していた。



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物語の精査の合間に書いた小説を新作として公開致しました。
ぜひこちらもよろしくお願いします。

迷宮都市の料理人
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