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33.セリナの報酬

活動報告にも書かせていただきましたが、ブックマークが100件を超えました。

皆さんのおかげです。引き続きよろしくお願いします。

 ギルドへの扉を開ける。

 相変わらず騒がしい受付に、目を向ける。


 そうすると、すぐに僕に気付いたようで、受付の男性の1人が会釈してギルドマスターを呼びに行った。

 しばらくして、8畳程の部屋に案内される。

 テーブルを挟み、向かい合わせのソファーが置いてある応接間のような部屋だ。


「タカヤさん!」

 ソファーの横に立っていると、急に扉があき誰かに後ろから呼ばれ、振り返る。


 突然視界が遮られ、頭全体を極上の柔らかさで包み込まれる。

「タカヤさん、タカヤさん、タカヤさん。ご無事でなによりです。」


 ふにょんふにょんと柔らかくて、大きなものが顔を撫でる。

 まったくもって顔は見えないが、この声そして頭を包み込んでいる柔らかな感触の大きさは!


「セリナさん?!」


 慌てて胸から体を離そうとするも逆に引き戻され、より内部へ埋まる。

 極上の柔らかさが、頭全体を包み込む。


「はい。この度の顛末全てお聞きしました。ゴーバの事も含め、こちらのフォローが足りず、タカヤさまを危険な目に合わせてしまいました。

 なによりも、私の名前が出てきたと伺っております。私に危険が及ぶのを心配して頂き、ゴーバ達に手が出なかったと。

 痛い思いをさせてしまったと。苦しい思いにさせてしまったと。

 申し訳ありません。タカヤ様にご迷惑をお掛けしてしまいました。」


 セリナさんは只々謝罪の言葉をなげ僕の首元を涙で濡らした。





「申し訳ありません」

 そう頭を下げるのは、先程とは違い、いつものギルド職員としてのセリナさんだった。


「大丈夫ですよ。セリナさん心配して頂いて有難うございます。この通り傷も残ってないですし、いつも通りです。」


「タカヤさんにあんな醜態を。。。」

 顔を真っ赤にして下を向くセリナさん。うん可愛い人だ。


「いえ。まぁ僕も無理に離そうと思えば離せたと思いますし……。」

 すけべ心が完全に勝ってました。とは言えないがあの感触はおそらく忘れない。いや絶対忘れない。最高の報酬頂きました!


「そっそれよりギルドマスターに、昨日の件をどうすれば良いか聞きにきました」

「はい。その件でしたら承っています。そろそろギルドマスターが来られる頃かと」


 バンッ

 勢いよく扉が開き、セリナの言葉を遮る。


「おう。遅くなった!ん?何だ二人ともそんな所に突っ立って。早く座れ。セリナはちと飲みもんでも持ってきてくれ」


 スイデンからの注文を受け、軽くお辞儀をしセリナは退室していく。

 対面に座ったところでスイデンが話し始めた。


「今回の件、ご苦労だった。まずタカヤお前が何をやったか整理しよう。」


 現状ごちゃごちゃになっている事の整理とその後について、スイデンは説明を始めた。

 ・指名手配盗賊団、フェイド盗賊団のアジトの発見

 ・フェイド盗賊団の完全壊滅

 ・攫われた人々の発見

 ・攫われた人々の救出

 ・衛兵の不正の発見

 ・略奪品の発見及び回収


 この6項目だが、通常であれば1つ1つが、冒険者の手柄になり得るものであり、発見と壊滅、発見と救出が別々なのは、見つけたからといって殲滅できるものではない為。であるそうだ。

 勿論発見と救出も同じ意味との事だった。


 そして今後については

 ・指名手配中の盗賊団員の確認

 ・攫われた人々の解放手続き

 ・略奪品の返却交渉

 ・ギルドランクの更新

 ・衛兵の不正の証言

 があるとの事だった。


 もし攫われた人の中に、奴隷がいれば所有権の譲渡があるらしいが、今回は一般市民と商人、そして冒険者である獣人という事だった為、解放される事となった。


 また略奪品の返却交渉は、通常は全て僕の者になるが、僕が返却の意思を示していることから、返却のための交渉を受け付ける事になった。


「さて、色々と言いたい事もあるだろう。が、今回の件。こちらからタカヤに対し謝罪や何か便宜はかることはしない。あくまでもギルドとして正当な報酬を支払うだけとなる」


 確かに今回の黒幕は元Cクラスの冒険者であるゴーバであった。


 しかし、それに対してギルドが何か便宜を図るのは確かにおかしい。

 盗賊のアジトの発見、盗賊の殲滅、攫われた人達の救出に対して報酬がでる。これは正当な冒険者としての通常の仕事のうちで、貰えるべき報酬だからだ。


「はい。勿論です。ところで今回の件って報酬なんか出るんですか?何もクエストとして受けてませんが」


「ああ。出る。今回のように盗賊がらみの場合一々クエストなんか受けていたら好機を逃す。そのため、事後で処理される。今回は指名手配の報酬と、衛兵の不正に対する報酬は詰所で出るがな」


 そういって手に持っていた小袋をテーブルに置く。


 コンコンッ

 小袋がテーブルに置かれたところで、セリナさんが飲み物とメモを持って帰ってきた。

 ギルマスにメモを確認させると、本来の業務に戻るようで、軽く頭を下げ部屋から退室した。


「話を続けるか。これが今回の報酬だ。一応トップは替わっていたがフェイド盗賊団は指名手配がかかるほどの盗賊団。それなりに報酬も多い。白金貨1枚と金貨28枚。これが今回の報酬だ」


「……は?金貨総数128枚!そんなにあるんですか?」


「おう。そりゃそうだろ。なんせ本来複数人でやる仕事だ。総取りならこんなもんだろ。プラス指名手配報酬も後からあるしな。それと今日からDランクな。本来全くクエスト数が足りないが、1人でCクラスのゴーバ率いる30人弱を殲滅となると話は別だ」


「Fから2ランクUPですか。有難うございます」

 登録してから数日でランクD。迷宮に入れるDを目指してたけどこんなに早くなれるとは。


「だが!」

 Dへの昇格について考えていると、考えを遮るようにギルドマスターが手を前に出して言葉を続ける。


「今回は特例となる。実は条件が課せられている。今のままだと緊急時はDとして扱われるが本来はEというおかしな状況だ。他のギルドの奴らがお前の昇格に対して異議を唱えてきている。だからこそタカヤよ、Dランク相当の依頼10件分。クリアと共に正式なDとして認める。こちらの都合で申し訳ないがとにかくクエストをこなしてくれ」


 そうすれば文句は言わせないと、スイデンはこのおかしな状況に頭を下げる。


「わかりました。どうせこの後色々と依頼を受けようと思っていたところです。Dランクから10件受けてみます」


「おっおう。頼む。お前の実力はギランからお墨付きをもらっている。あいつからのお墨付きなら俺は文句ねぇ。俺からは以上だ。」


「はい。有難うございました」


「この後の事だが、このままここに残ってくれ」


 どうやら先程のメモにあったようで、この後ここで攫われた人達の解放の手続きが行われるそうだ。


 ギラン同席のもと、事務処理が行われる手筈となった。


読んで頂きありがとうございます。

感想&評価頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

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物語の精査の合間に書いた小説を新作として公開致しました。
ぜひこちらもよろしくお願いします。

迷宮都市の料理人
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