8話 冒険者ギルド
「冒険者ギルド? なに、やっぱあんの? そういうとこ」
「まあね、もう魔術師になったんだから、これからは当たり前に働いてもらうわよ」
ここ最近異世界ファンタジー要素の低いことばかりが続いていて、もうそういった要素は諦めていた泰弘だったが、なんとこの世界にもあるというのだ。
冒険者ギルドは、job職業についた者が、冒険に行く前に依頼を引き受ける派遣組合みたいな場所らしい。
保険を掛けてくれたり、健康診断を受けたり色々サービスが付とのこと。
「一緒に付いてきてくれるのか?」
「何いってんのよ、もう大人なんだから一人でいきなさい。私は本業に戻るから」
そう言って「今日のコーデは………」など女子力の高そうなことを呟きながら身支度を始めるデジコ。彼女に付いていくほうがレベルが上がりそうなので、同行出来ないか尋ねる泰弘。
「え、だったらデジコの仕事付き合いたいな」
「アンタみたいな新米魔術師なんか連れて行ったら効率下がるわよ、それでなくても穀潰しなんだから。いいから行きなさい。なれたら連れて行ってあげるから」
「うっす!! 了解。スギボウ行ってまいります!!」
修行の間はずっとデジコのポケットマネーから食事代を払ってもらっていたので、大食いの泰弘が消費した分稼がなければならないという、駄目男を支える彼女みたいな事を平気で言うデジコさん。
さり気なく「終わったら帰ってきてね」という雰囲気も醸し出し泰弘を見送る姿は彼女というより若妻みたいだ。
ウエストロッドの都ステイビアの大通りにやって来た泰弘。
街の人々は、鎧こそ身に纏っていないが長剣を腰の鞘に収めて歩く剣士や、あまり都会では見かけないような飾り気のないブラウスとズボンで闊歩する商人の女の子など、改めてそれなりに剣と魔法の世界なんだな……と思う泰弘であった。
冒険者ギルドに入る前に、済ますことがある。
昨夜「これからは持ち物も自分で選んで買い揃えなさい」と武器屋で装備を買っておくよう言われていた。
「武器屋SORANOってここかな?」
大通りから少し外れた一角にある一軒家。日当たりの良い高台の区画の端に立てられていて、隣の鉄火場に店舗のスペースを取られているようで中に入れば意外と狭い。この街で一番の老舗でいい武器が売っているとのことだ。
店の中では、店主が箒で掃き掃除をしながら客を待っていた。すかさず胸をみる泰弘だったが「いらっしゃいませ」の声は明らかに野太く、顔をみればやはり男だった。
「魔術師なんだけど、魔術師用の武器を見繕ってもらいたくて」
「杖か、本か……短剣あたりが魔術師の武器ですよ」
「定番はやはり杖か……」
「杖ならこちらですね」と案内された先には、様々な杖が飾ってあった。
一番安い杖は蓄積杖という10円(通貨単位は適当)の杖で、高いのは白薔薇水晶の杖という女子力の高い杖で500万する。
白薔薇水晶の杖はキラキラ感がハンパなく、もはや魔法少女アニメで主人公格が持つコスプレグッズに見える。
安い蓄積杖は……地味。以上。って感じだ。
「ううむ……ここまでワゴン価格だと逆に気になる……おっさんこの蓄積杖ってどんな杖なの?」
「ああ、そいつは結構癖のある武器でね、複数買いが基本になる武器ですよ」
「ほう……」
武器屋の店主によると、この蓄積杖は攻撃魔法の威力を蓄積するから蓄積杖と呼ばれているのだが、その蓄積条件が非常に癖があり、1種類の魔法しか蓄積出来ないらしい。2種類目の魔法を使った場合最初に蓄積された魔力は完全にリセットされ再び2種類目から蓄積が開始される。
要するに、一つの魔法で1本。複数買いが基本とはその事を指している。
「がさばって面倒くさいってやつか、だから安いのかぁ」
多くの魔法を使用する魔術師において、見た目が同じ杖を複数持ち歩きいちいち使い分けるなんてことは非現実的でありえない。
それならば、強い杖一本もてば済む話、実際にデジコは普段使用する杖は指示棒みたいな杖1本である。
だが、「水と風に絞っている自分なら、両手に持てば強いんじゃね?」と思う。
(値段も安いし、試しにこれを買って見るか……、杖二刀流とか、地味にカッコイイしな……)
などと杖を前方でクロスさせて構え、魔法詠唱をかっこよく決める自分を想像して酔狂する。
杖事態のデザインがやや地味なのが玉に瑕だが。
(100均でデコパかって、あとで自分で水っぽいのと風っぽいので飾ろう。わかんなくなるしな)
武器は買ったので、防具も買うべきなのだろうが、買い物が面倒くさくなってやめる泰弘。
それに防具に金使うなら、食いもんかった方がマシらしい。
装備を買ったので、目的地に移動する。
あと、買い物をする時、消費税がないのがありがたい。もしかしたら税込価格かもしれないが。
*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*
冒険者ギルドは、流石に大きな施設で、田舎のイ○ンくらい広い。ギルド内では各地から集った大人の冒険者がそこら中に溢れかえっていた。ここは6歳だらけの入園式みたいな雰囲気はない。
というのも、job職は6歳からだが、彼らは普通に小学校など学校に通う。
冒険者ギルドは普通に大人が仕事を受け持つ場所なのだ、なのでここには冒険者達が情報交換し酒を交えて歓談するバーみたいな場所もある。
そして、もう一つ驚いたものを見つける。
何時から飲んでいたのかわからないがへべれけになっている男性冒険者が受付嬢にセクハラみたいな絡みをしていたのだが、その受付嬢は半獣人……獣耳のお姉さんだった。
これには泰弘も「おっぱ……おぱ……けもっ……ケモミミっ……おっぱみみ!?」とどっちで萌を充電するべきか混乱するのであった。
「やべぇ……こいつはびっくりどっきりだぜ。立ち寄らなかったから気が付かなかっただけで普通にあったよ……ファンタジーが……てかお姉さん大丈夫……みたいだ……」
男はすぐにふっ飛ばされてしまった。伊達に荒くれ者相手にここのスタッフをしていない、と言うことだろうか……。獣耳お姉さん強し。
髪の毛の色も、現実だと絶対浮きそうなパステルグリーンの髪の色のお姉さんなどいて今日は一日ここで人間観察して過ごしたい気分だが、流石にここまで来て一銭の稼ぎも無いまま帰るのは男として情けないので仕事を探す。
「「冒険者ギルドの登録と、仕事の依頼、引き受けたいんですけど?」」
――――!?
声がハモった、同じタイミングで受付に来た人物がいたようだ。
声がシンクロした二人は、お互いの顔を見合わせた。
「あ、そちらからどうぞ……」
「いえ、俺は初めてで勝手がよくわからないしお姉さん先にどうぞ……」
「では、お言葉に甘えて」と泰弘より先に受付を済ますことになったのは、日本刀を帯刀し青髪をした剣士の少女だった。髪型がリナちゃんと同じポニーテールで流行っているのかなと思いつつ重大なことに気がつく。
(あれ? 俺いまおっぱいカウンター発動したか?)
普段なら、髪型より先におっぱいに目が行くはずなのに、おかしいと思いつつ取り敢えず目算でその少女のおっぱいを見る。
(やはりおかしいな、目算だと大体DよりのCなのは解るのだが、カウンターではAとでる……まさか)
「ちょっと君さ?」
「はい? 何でしょうか」
「それ、偽乳だよね」
「――――!?!?!?」
そう言った途端、全身に冷や汗を流し顔面蒼白し「なぜわかったの!?」という表情で硬直する。
その反応だけで泰弘は確信し、悟ったように語り始める。
「たとえお天道様が許してもね、それはいけないね。おっぱいがなくても健気に300年以上生きている子もいるんだ。たとえ小さくたって自分の本当の姿を偽っちゃ駄目だよ。おっぱいは尊いんだから……そんな偽物おっぱいで隠しちゃ駄目だ」
「…………あ、はい。す、すみません……」
自分自身の発言に「俺良いこと言うな……」と酔狂し頷きながら少女に説教する。
少女は、最初焦っていたが、泰弘が頭のおかしい変態だとわかり「適当に謝っておけばいいか」という感じで受け流していた。
とりあえず、二人共冒険者ギルドの登録が済んだようでロビーに戻る。
泰弘が、せっかくだし一緒に行動しませんか? とナンパするが、警戒されて断られてしまう。
諦めて一人で狩りに出かけようとした時、遠巻きから聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「レベル上げ代行本日開業やで~。レベルが上がらなくてどエライ困っとる冒険者はんは居まへんか~。1日で99レベルに達成出来まんねんよ~」
独特な関西弁風の訛声、アルヴィアールだ。
どうやら、あの日言っていた“レベル上げ代行業”という仕事をついに開始したらしい。
ギルドにいた冒険者達も珍しそうに集まってきた。どうやらレベルを代行であげるという発想は過去になかったらしく、相当珍しい催しを見るように注目を浴びている。
「ほんとに一日で99になるんですかぁ?」
「なれまんねんよー。商人のわいのレベル見てみぃ? ほら99やろ?」
「へぇ~。商人のjobで99!? すっご!! ちょっとやってみようかな……」
戦闘スキルがあまり充実していない商人のjobはレベルを上げることがかなり大変で、その商人が99レベルと言うのは代行業が本物であるという信用度が高くなる。
胡散臭いものを見るようにしていた冒険者達が次々「俺も参加したい」など集まってきた。
「おおきに~。枠まだあいとりまっせ~。30分後狩場に出発するんで、参加者はパーティー受けてロビーで待っててくれへんかの。時間が来たら、うちの聖職者が送るさかいに~」
パーティーは個人用携帯端末からその時チームを組む相手を登録することで情報をリンクし、その間はパーティーメンバーのHPなどを他人の個人用携帯端末でも確認できるようになるシステム。
パーティー中は念話という、パーティーメンバー同士でテレパシーみたいな心の会話が出来る機能とかもあるらしい。相変わらず良くわからないところでテクノロジーが発達している。
「よっ!! アルヴィアール!! 凄いな、商売大繁盛じゃねぇか」
「おや、スギボウはんやないやろか、お久しぶりや。スギボウはんもギルドに居るちうことは、job職に就いたちうワケやね。よかったら参加しまへんか。枠はまだあるんやよ」
レベル上げ代行には枠っていうのがあるらしい、参加すれば一気に強くなってデジコを驚かせることが出来るだろうが、泰弘は断ることにした。
今はまだレベルがどれくらい上げづらいのか分からないし、一先ずは自力で強くなりたいと思ったからだ。
「わり、俺は良いや。自分の力を試したいんだ。どーしても行き詰まったらそのときは頼むわ。じゃ、頑張ってくれ」
そう、なるべく角が立たないように断りを入れる。
アルヴィアールは残念そうな顔をするが、泰弘が断ったすぐに別の参加者がきてどうやら“枠”は埋まったらしい。そのまま転送専用の聖職者の仲間が彼らを目的地に飛ばして辺りは一気に静かになった。
仕方なく一人で依頼が張り出されている掲示板前まで来て、新米冒険者でもできそうなものを探す。
「ノースベルに向かう森の奥に住み着いた亡魔獣の討伐……ノースベルは寒い場所だよな、俺寒いの嫌いなんだよな~。ウエストロッド内なら木の実集めってあるな」
依頼の引受は掲示板に張り出された用紙にQRコード的なものがあって個人用携帯端末で読み取り開始する。
なので、ここに張り出されているものでも僅差で定員割れすることもある。
とりあえず試しに読み込んだノースベルの討伐は人気があったらしく、定員割れ&高レベル冒険者必須!! と条件付きでどの道やれなかった。
やはりまずはレベル上げだ。幸い木の実集めはバリバリ募集中だった。
普通は山菜採りでレベルは上がらないが、道中出現する亡魔獣が居るだろうしそれなりにレベルは上がるだろう。
*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*
早速その木の実がある場所に向かおうと街を出たすぐ少し開けた草原を歩いていると、全身ごっつい鎧の奴がウロウロと歩いていた。
「なんだぁ、亡魔獣にもさまよう鎧みたいなのがいるのか?」
「うぅぅ~、重い~っ!! ここまで来るだけで疲れたよぉ!!」
そう呟いて徐に剣を引き抜いたと思ったら、泰弘に向かって剣を振り始めた。
殺意は感じず、どうやら兜が大きすぎて周りが全く見えないまま素振りの練習を初めだしたみたいだ。
「おいっ!! やめろ!! 人がいること確認してそういうことやれよ!!」
「えいっ……どりゃあっ……て、誰かいたの?」
「いるよ、それにお前どう見てもその鎧でか過ぎだろ、身の丈にあったもんにしないと身体逆に壊れちまうぞ」
「いまの発言は勇者に向かって装備品は~とかいうモブの台詞くさかったか」など思いながら、おせっかいな声をかける。少しの素振りだけですっかりバテ気味の様子だ。
「やっぱりぃ? 俺もおかしいとは思ってたんだぁ。でも一応見習いだから危ないから装備しなさいって言われてさぁ。それに子供だとバレたら門番のおっちゃんに一人で外に行っちゃ駄目って止められるしさぁ」
「って、お前子供なのか? そういえばデジコがここの門番はちっちゃい子が外に出ないための見張りとか言っていたな……とりあえず脱げよ、立ってるだけでもきついだろそれ」
「そうそう、俺昨日合格したばかりなんだ~って、兄ちゃんじゃん!! 俺だよディルだよ」
自分でもこの鎧は不釣り合いだと感じていたみたいだが、この世界の事情からやむを得ず着込んでいたらしい、脱ぎ始めた鎧は子供用というよりドワーフみたいな種族用なのだろう。
完全に大人向けの重量で地面に落とす度にズシンと腹に響く音が聞こえる、逆によくここ迄これたものだと感心する。
「なんだ、ディルか。鎧で声がこもっていて分からんかったぜ。イリアーナちゃんはどうしたんだよ。振られたのか?」
「振られたとか、兄ちゃんじゃないし。イリアーナは真面目だから黙ってきたよ。親にもちょっと町中いくって嘘ついてきちゃったし」
「リナちゃんなぁ……」
リナちゃんの事はディルも見ていたらしい、泰弘にとってキツイカウンターだった。
この世界では、同伴者が入れば外出okなのだが、亡魔獣が蔓延る死の危険がある為、子供一人で町の外へ出ることが禁止されていて厳しく保護されている。泰弘がそうまでして出ていく理由は何なのかと聞くと、ディルは「母の飲む紅茶の実がきれてたから取りに行こうと思った」と言い、「それを持って帰れば外に出たことがバレるだろ」と突っ込むと、しまったみたいな顔をするディルだった。
今からでも遅くないから帰れと叱る泰弘だが、ディルは「大人と一緒ならいいんだ」と泰弘についてくることになった。ギルドの依頼の木の実集めというのが丁度ディルのいう紅茶の実らしく、山道案内に気合が入るディルであった。
ちなみに、「今日は学校ないのか?」と聞くと、日曜日試験をした学生は、次の日は振替休日をもらえる制度があると教えてもらえた。
「あ、プリモちゃんだ」
「プリモちゃん?」
ディルが、指を刺した方向にプリモちゃんと呼ばれる亡魔獣が現れた。
名前は可愛いが、一言で言うと“ゾンビ”である。
悪臭を放ちながら、腐った肢体を引きずりじっくり接近する亡魔獣プリモちゃんを魔法で倒そうと構える泰弘だが、近接職のディルは慌ててプリモちゃんから距離を置くように離れた。
「兄ちゃん、そいつ爆発するよ、すぐ逃げて!!」
「は? そういう系かよっ! げげーっ!?」
時既に遅し、出現したプリモちゃんはいきなり崩壊した。引き上げられたクジラみたいな奴だ。
肉体的ダメージは無いが、その時飛沫した腐った汁を浴びて精神的なダメージを負う泰弘。
この世界ではそれが、そのままSP減少効果となり魔術師としては痛い門出となった。
「兄ちゃんクッサ!! ムニムニガスもろに受けちゃったね!!」
「ムニムニ……ガス?」
鼻を摘んで嘲笑いながら戻ってきたディル。
亡魔獣はムニムニガスという悪臭を放つ気体を内部に溜めているらしい、なので臭いのだという。
ムニムニという響きから、愛犬が好きだった言葉もムニムニだったことを思い出す。
ようやく目的の森に到着する。土と枯れ葉、熟れて落ちた実の匂いが混じる。
「誰もいないし採り放題だね!! いっぱい採っておこっと」
「そうだな、紅茶に入れるって言ってたけどそのまま入れるのか? どれどれ……」
そう言って、一口味見をする。紅茶に入れるというくらいだから毒はないだろうと特に警戒心もなく食べていくさまはまさに食いしん坊キャラと言った感じだ。依頼品なのであまり多くは食べれないが、味はサルナシ見たいで甘酸っぱく美味しい。今度は個人的に採りに来ようと思う泰弘だった。
ディルによると、紅茶にするときはこれを乾燥させてから飲むらしい。
とても良い香りが出て、“滋養強壮”や”“解熱剤”の効能があり、この世界の住人は風邪をひけばこの紅茶を飲むそうだ。
拾い集めた木の実を二人でカバンの中に詰め込んでいく。
カバンはアルヴィアールがくれたあの小袋の上位互換アイテムになっていて、より多くのアイテムを詰め込むことが出来る、先程ディルが脱ぎ捨てた鎧も、カバンに入れてしまえば重量無視で持ち歩くことが出来るみたいだ。
「遅くなる前に帰るぞ、病気の母ちゃんまってるんだろ」
「え、兄ちゃんなんで知ってんの? そういうスキルあったっけ? さすが魔術師だね!!」
「お前が風邪にきくって言ってたからな。母ちゃんに会えるうちに大切にしとけよ」
自分ひとりなら、もう少し残ってレベルを上げたいところだが、子供のディルがいるため、日が沈む前に、冒険者ギルドに戻ることにした。
それでも、道中行きと帰りで、それなりに亡魔獣と戦闘があり少しはレベルが上った。
ヌメロドロとも遭遇したが、流石に今回は結晶はドロップしなかったのが残念だ。
この結晶は、ヌメロドロに限らず全ての亡魔獣がそれぞれ結晶化する事があるらしい。
プリモちゃんの結晶とか、出ても拾いに行くのが憂鬱になりそうだ。
街に到着したらすぐにディルと別れ、見送った後ギルドに戻る。
「おかえりなさ……あ、プリモちゃんと戦闘したのですね……。すごい量のシラクチの実ですね!! 依頼主もきっと喜びますよ」
木の実はシラクチの実というらしい。
受付の獣耳お姉さんが鼻をつまみながら採ってきた木の実を受取り、1つ2000単位で報酬が入った。
どうやら279個あったらしく558000の報酬を受け取った。
「よし、懐は温まったし、S_O_B_Bしてから帰るか」
SOBB……Symphonic_Of_Battle_Beat泰弘の最近見つけたゲーセンの中にある格ゲー。
早く帰れよとツッコミが来そうだが、SOBBは既に泰弘の新しい日課になりかけているのであった。
帰る頃はもうとっくに日が沈み、家の中から何かいい匂いがしてくる。
扉を開けると、デジコが何かを煎じて出迎えてくれた。
「あら、おかえり。今日は依頼していた木の実が大量に入荷されて、シラクチティーを作っていたのよ」
「まじか!! あれってデジコの依頼だったんだな」
「なに? これあんたが集めた実なの? 随分いいとこみつけたのね。普通はこんな大量に採れないわよ」
「へぇ~。知り合いに教えてもらったんだが穴場だったんだな」
ディルのお陰で、大量の木の実を手に入れることができた。
嬉しそうにするデジコを見ていると、泰弘もホッとするのであった。
「ほら、一杯飲んでみなさい。疲れがとれ……って臭い!! まさかプリモちゃんにやられた?」
「ああ、うっかりな」
だが、眉間の間にシワを寄せ始め、プリモちゃんにやられたといった途端、にこやかだったデジコの表情が一転して鬼のように変わっていった。
「剣士とかなら……いざしらず魔術師であいつの自爆くらうとかありえないからッ!! 修行が足りないわ!! 今からレベルを10上げるまで家に入れないからッ!!」
「え……せめて一杯飲んでから……」
「怠け者に飲ます紅茶はないっ!! 臭いから身体も洗ってこいっ!!」
豪快に蹴り飛ばされてしまった。
やはりゲーセン帰りということもバレているようだ。これからは亡魔獣との立ち回りをもっとうまくならなければなぁと思い、再び街の外へ行くことになってしまった泰弘だった。
アイテムデータ。
〈白薔薇水晶の杖〉
系統片手杖 Atk 55 Matk130
装備レベル 50 重量 1.2kg
破損 あり
特殊効果:全属性魔法の威力+5% 魅力+3 Def+2
・カラー・デザイン全てが女性的で持っているだけで美少女魔法使いになれる、可愛い自分を演出出来る杖。
性能も高く、全ての属性魔法に合わせて水晶が形状変化し、末永く幅広く使える一生品、武器屋SORANOオススメの品。
〈蓄積杖〉
系統 片手杖 Atk 80 Matk 10
装備レベル1 重量 0.8kg
破損 ほぼ無し
特殊効果:攻撃魔法1つストックし、次回使用時より0・5%Matk増加
亡魔獣データ。
■ヌメロドロ
HP50 Lv1
Atk 1
Def 2+1
Mdef 5+0
命中力 1
回避力 1
種族 菌類
属性 水
サイズ 中型
■プリモちゃん
HP 500 Lv15
Atk 45+45
Def 20+15
Mdef 3+3
命中力 100
回避力 5
種族 アンデッド
サイズ 中型
スキル 自爆