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スギボウの大冒険  作者: うああじた
2章 目指せ魔術師!!
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4話 目指せ、魔術師!! スキル名が覚えづらい

「えっとぉ~マジックトレースは、自分のSPと対象のSPを均一化する魔法スキルで、自分のSP量が多いと、相手のSPを回復させることができるが、あえて自分のSPを抑えることで相手のSPを封殺できる……すげぇなこれ強くね?」

「その間、自分は何も出来ないから仲間がいないとダメだけどね」

「あ、そっか……。プリズンヴェールは魔法で出来た透明な布を被せることで相手を幽閉する……これって強い? 透明な布被せてどうなんの? 目隠しにもなんねぇじゃん」

「絶対に身動きを取れなくさせる完全拘束魔法よ」

「は? めっちゃそれやばくね? 必須スキルだろこれ」


 魔術師のjobスキルが書かれている教範を読んでは、いちいちスキルを尋ねる泰弘。

 それに最初は律儀に応えていたデジコだが、段々面倒になってきた。

 というのも……。


「ブラックカーテンって、拘束できるやつだっけ?」

「それは、目隠し専用、ま一回くらいは魔法スキルを防げるけど……ってそれ言うの何回目か覚えてる?」

「覚えてたら何度も聞かねぇよ!! 俺は暗記力皆無のスギボウだぜ!!」

「なに馬鹿を自信満々に紹介してんのよ……」


 泰弘の物覚えは、非常に悪かった。

 それはある程度想定済みだったのだが、それでも大抵の魔術師を目指すものは得意属性があり、例えば火の系統のスキルが好きなら、火属性系統の種類なら完璧に覚えたりと、ある程度記憶範囲を縮小出来たのだが、泰弘にはそれがなかった。一言で言えば全部だめ。攻撃スキルの名前はある程度イメージで保管している様子でいくらかマシといえばマシなのだが……。補助系統のスキルは彼には独特の言い回しがある様で、とにかく覚えづらいみたいだ。


「なんでだよ、ベールとカーテンとかどうしてどっちも布なんだよ。わけわかんねぇなぁ!!」


 八つ当たり気味に短気になっている泰弘に溜息をついて見守るデジコ。

 魔術師のスキルだけでなく、この後には他の職のスキルだって覚えなければならないのだ。

 それは、本来幼い年齢で職を決めることになる子どもたちが、元々興味を持っていた職以外にも目を向けさせることで、他職種への関心を深めると言った意味合いがあるのだが、一辺倒で一つの職に拘っている彼のような人物にはとにかく苦行となる。

 泰弘の場合、元々記憶の集中力がないのに、興味が沸かない職のスキルなどまず覚えられないだろう。


「暗記はこの辺で中断して、実技訓練いくわよ」

「おっし!! まかせろ!!」


 ただ、一つ救いがあるのは、泰弘が実践向けだったことだった。

 ペーパー試験は絶望的だが、体を動かすことに関しては中々のものだという。

 元教師で、試験官もしていたデジコにとって、試験内容は大方掌握していて、実技試験の内容ならば大きく分けると――。

 ・魔術師としての立ち回りの評価

 ・指定ダンジョンのスピードクリア

 ・試験中のポイントモンスターの討伐数

 ・ボスモンスターのスピード討伐

 ――である。

 試験中に限り、仮免的にスキルを使用できるスクロールと呼ばれるアイテムが配布されるので、魔術師も魔法のサポートはできる。

 試験対策に、試験と同じ魔法スクロールを使い特訓する。……これは、jobスキルの力を封じ込めた魔法アイテムで、消耗品として使用することで特定のjobスキルを使用できるアイテムだ。

 最初は巻物風の物だったが、軽量化が進み、現在では手のひらサイズのカード状にまで進化している。

 ちなみにかなりの高級品で一枚の単価はかなり高い。


「いい? スクロールだからspは消費されないけど、その人物に応じた枚数しか配られないわよ、無駄撃ちは許されないからね!」

「まかせろ。攻撃用に、防御用に……補助用……リアルカードゲーマーみたいでカッコイイぜ」

「対象の討伐モンスターは、魔術師の試験官がサモンモンスターで呼び出したモンスター。サモンモンスターに関しては大丈夫よね?」

「ああ、バッチリだ。こいっ!!」


 ・サモンモンスター……魔術師のjobスキルで、術者の代わりに戦闘や補助を行うサポートモンスターを創造し召喚するスキル。魔術師の属性系統の中でも人気が高く、サモン系スキルを中心にした魔術師は多い。


 デジコが、自らサモンモンスターを使用し、試験さながらの戦闘が開始される。

 彼女が使用するスキルは、専用でレベルを上げたサモンスキル……まではいかないお粗末なレベルだが、彼女自身の魔術師としてのレベルが高いために、一般的なサモン魔術師が召喚するモンスターに引けを取らない強力なモンスターが召喚される。

 召喚されたモンスターは、彼女の趣味がよく現れており、オカルト的な神話性を孕んだ不気味で異形の怪物だった、これならその辺の亡魔獣のほうが可愛いかもしれない。


「くっ……! プリズンヴェール!! クリムゾンボルト!! ちっ、はえぇ……強すぎだろ」


 拘束スキルで敵の動きを止め、その隙に攻撃魔法を打ち込む。

 魔術師としてスタンダードな戦法を行うが、デジコの召喚したモンスターは羽はあるは、触手はあるは、脚は多いは……と何でもありのチート級で、お決まりの戦闘手段では全く歯が立たない。とはいえ、機を狙った戦術をとろうとしても、まだ基礎がしっかりしていない泰弘にとっては相手の思うつぼで軽く翻弄される。


「おそい! もっと早く動かないと死ぬわよ、試験用のモンスターでも具現化された生物、殴られたら痛いし血が出る。必死で攻めてくるわよ」

「そんな――、こと――、いったって――、こっちも――必死だっ!!」


 体を動かすことに関しては中々……と言っていた泰弘ではあるが、当然普通の人間である。

 ゲームでキャラクターを動かす様に素早く移動も出来ないし、武器だって軽々しく振れない。

 デジコも、泰弘がふざけている訳でなく頑張っていることは分かっている。


(ちょっと、厳しすぎるかな)

 必死に泰弘を育成する自身に、ある人物を重ねる。

(あの子に、影響を受けてる、のかな)

 過去に、ライバルとして戦ったその人物は、育成に関しては誰よりも優秀で、人は勿論、動物や植物その対象は自分自身にも及び、セルフプロデュースをすることで、若い年齢に関わらず高レベルまで自身を育て上げていた。

 世界最強の魔術師としてこれまで敵なしで生きてきた自分がようやく巡り会えた対等と思えたライバル。

 その人物が得意とした“育成”という土俵に自らが登ることは、デジコにとって自尊心を揺るがす行為であった。

(ありえないっ、私が、あの子の真似なんて)

 しかし……、一向に成長が見込めず、伸びない泰弘に、「あの子ならもっと上手に育てるだろう」と言う、自己嫌悪に苦しむ。

 こうした特訓が連日行われた。ある日。


「ぐっあっ!?」

「あっ……!!」


 日々、繰り返される厳しい訓練に、泰弘がついに大きな怪我をする。


「ご、ごめんなさい……」

「平気だぜ……、大丈夫大丈夫。これくらいっ……なん、でも……?」


 泰弘にとっては浅い傷、だとおもったのだか、怪我をさせたと言う責任が、彼女には酷い重圧だった。

 青褪め、放心してしまったデジコ、召喚していたモンスターも彼女のからの魔力供給が突然途切れ消えてしまう。

 この日の特訓は中断された。 雨が、降って来たからだ。


 訓練のために人里から離れた山奥の小さな小屋。

 今はそこで二人住み込みで修行を行っている。最低限の家具だけが置いてあって、一つの空間に向かい合わせにベッドが2つとその中心に食事用に小さな机と椅子がある。

 窓はガラス製……に見えたが、どうやら樹脂製のようだ、そういった加工技術もこの世界にはあるみたいだ。

 窓から見上げる空は、真っ黒で厚い雨雲に覆われ、地面は大きな雨粒によって乾いた箇所は既に無い。

 アクリル系の窓を打つ雨だれの音は、ガラスに比べてクグモッていて寂しい。


「どうしたんだよ、らしくないな、全然たいしたことないんだぜ?」


 机に塞ぎ込むように座るデジコに、「ほらここ、いたくな~い」と怪我した箇所を見せていつもの様におどけてみせるが、暖簾に腕押しといった感じで、反応が薄い。

 すこし口を閉ざし、真面目な顔をして様子を伺うと、デジコがポツリと心境を漏らす。


「わたし、全然育てる才能がない、スギボウが全然強くならない……」


 それを聞いた泰弘は意外だ、という表情を見せる。

 本人は全くそうは思わなかったからだ、むしろ彼女の指導は的確で、苦手な暗記も静と動のバランスの良い特訓で意外と脳に染み付いている。

 今では若干のニアミスはあるが、殆どのスキルは聞けば解る。ゆっくり紐解けば正解できる。といった具合まで成長していた。

 実技特訓も、異界の邪神似の極悪なモンスターを相手に、よく喰らいついていけている。


「いや、そんなことないだろ、スクロールだって、日に日に使い方うまくなってるし、モンスターだって倒すの早くなってるじゃん!! って自分でいうのやばい?」

「……ほんと? 強くなれてる?」

「なれてる! デジコ先生の指導でスギボウはレベルアップしております!」

「そう?」


 旧帝国陸軍ばりの敬礼風に声を張り上げて答える泰弘。

 伏せていた顔がゆっくりとあがり、泰弘と顔を合わせる。

 その目は泣いて腫れぼったくなっていて、いつもの傲慢で強気な瞳とかけ離れ弱々しい女の子の目だった。


「そうだよどうしたんだよ、なにセンチになったあ? 俺は大丈夫だよ、デジコは最高の師匠だよ」


 普段見たことのない彼女の弱さに、自分でも恥ずかしくなるくらい優しく声をかけ、思わずその髪をそっと撫でる。

 初めてあったときから小さいロリ少女だと思っていたが、いざ撫でてみればやっぱり子供みたいで可愛い。

 けど、触れたときに広がる香りは彼女が捧げてきた人生を感じさせるほど深く泰弘を惑わす。


「……うん。ありがとう……」

「お、おう……」


 雨はいつの間にか上がっていて、先ほどとは一変して雲の切れ間から太陽の日差しが差し込み、どこで休んでいたのか力強い蝉の鳴き声が耳に届く。

 窓を開ければ、雨の残り香を微かに感じ、過ごしやすい外気を頬に受け、「たまにはこんな雨宿りも悪くない」と思う泰弘だった。


この話から同期未完ですが、修正が追いつき次第変えていきます。

お詫び:現在話が繋がる微妙な線なので、もう少しこのままでいます。


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