表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/1

麓にて

 初夏、修三と陽介は夏休みを同じにして富士山にやってきた。大阪から陽介の車を交代で運転して夕方着いた。いつもと同じく馬鹿な話ばかりの道中だった。


 真のド田舎に来ると修三が毎回言う質問がある。


 「この辺の人たちは一体何が楽しみで生きているんだろうな?」


 「毎日やってるんじゃないの?」


 「マジで!?ヤリヤリなの?」


 「ああヤリヤリだよ」


 「良いなあ、そんな大人に僕もなりたい♪」


 「カスが」


 富士山の麓はそれほど田舎ではなかったのだが、とりあえず修三は言っておいた。陽介の回答も毎回同じだ。


 二人は温泉を探して徘徊する。車窓を開けると湿度が高い。空気が重い。空の多くを占める富士山は暗い夕焼けに染まり、頂上には雲がかかっている。スカイロードを行った先にようやく温泉を見つけて入浴。運転の疲れを癒しすぐに河口湖畔のユースホステルに投宿した。まだ午後8時。他の客は数人しかおらず、宿はひっそりとしている。


 「1時過ぎには出発するぞ」修三は陽介に話してすぐ眠る。今は禁止が求められている弾丸登山をする計画だ。未明に登り始め、頂上で夜明けを見て、そのまま降りて昼過ぎには終わる。それを、最もハードな御殿場ルートで行う。修三は4回目になるが歩行時間は10時間前後。今回は陽介もいるから12、3時間に迫るだろう。だから数時間の仮眠でもしっかりと寝ておかなければならない。長距離運転の疲れもあり、二人とも寝つきが良かった。


 そして目が覚めた。


 気持ちが昂りあまり眠れない。時刻は〇時前。消灯時間を過ぎ静まり返っている。枕元のスタンドライトを点けてライトノベルを読み始めるもすぐ閉じた。陽介の寝息が聞こえる。よく寝ている。再度ガラケーで天気予報を確認する。窓の外は闇に包まれているが、時折、表の車道から車の通りすぎる音が聞こえ一瞬明るくなる。


 「よし行こうか」修三は決断した。


 「ぐぅ・・・うーん・・・マジで・・・?」起こされた陽介が慄く。


 「行っこうよ!」修三は力強く言った。


 「・・・わかったよ・・・」眠そうに陽介が応じた。


 二人は迷惑にならないよう、こっそりと準備を始める。着替え、布団を畳み、シーツを畳み、シーツを返却し、荷物をまとめる。それでも深夜の物音はよくひびく。誰も起きてこない。玄関の開き戸をゆっくりとガラリガラリと開けた。外に出て富士山の真っ黒な山影を見上げると、小さな光が幾つか瞬いている。夜間登山をする人のヘッドランプだ。この日夜空は快晴で麓から見ても控えめな星空が広がっている。月もどこかに出ている。陽介お気に入りのアニメソングをかけ、コンビニで飲料水とおやつを買い、最初は修三が運転する。御殿場登山口は富士山の南東、河口湖からはほとんど反対側にある。さすがに車は少ない。走る車は登山者のものが多いようで他県ナンバーが目立つ。登山道へ上がり始める道のコンビニに立ち寄り、最後の仕入れを行う。酸素缶と弁当だ。店内は意外に賑わっていた。やはり登山者が多いのだろう。皆、楽しそうである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ