凶兆連鎖領域 Ⅲ
神崎は死んだ、ではなく消えたと言った。
「消えた、ですか?」
葉村が訝しげに問い質す。
まさか占領軍が自分から身を引くはずがない。それはここにいる誰もが考えていることだ。
「まさか第三者が介入しているというのですか?」
「葉村ちゃん、そうかもしれへん。そして、その第三者は」
途切れた言葉の先は二人なら分かる。晶具を使う者であるということだ。
「まあ、その下手人はまだ分からん。下手に刺激せん方がええかもしれん。とりあえず、占領軍は神戸に新しい一個大隊でも送り込んでくるやろ。お前らはここから避難せえや」
「避難というと?」
「北海道に行け。これは仕事も兼ねとる」
はあ、と生返事をしたジン。
「まだ少し時間は残っとる。次の仕事先、北海道のとある組織について話そか。ああ、学園への手続きはワシがやっといたるわ」
大人と子どもの間にいるその女性は終始嬉しそうだった。紫色に光る花々で神戸の街を包み込んで、神戸海洋学園の跡地で変化した神戸の街を見下ろしている。黒く塗りつぶされた海を抱いたその街はやはり美しく、宵闇に映える灯火はそれに彩りを添えていた。
「やっと、見つけた」
もうその言葉を何度呟いたことだろう。
長きにわたり待ち続けてきた存在。
未来永劫出会うことすらないと思っていた人。
夜闇に溶けるような艶やかな黒く長い髪が海風で揺れる。
「ああ、やっと私を理解できる人に出会えた」
白く綺麗な指を静かに鳴らす。
それだけで咲き誇っていた不思議な花々は幻のように姿を消した。散り行く花々はわずかに光を放ち、最期の時でさえも麗しい。
「さあ、第二幕と参りましょう」
その言葉を理解できる者はそこにはいない。
制服のスカートの端をつまんで、恭しくお辞儀すると、彼女は夜の神戸の街へと歩んでいった。
おはようございます、星見です。
色々忙しく?中々書けませんでした。夏季休暇までにはと思っているのですが、どうなることやら(涙)
とはいえ、もう数話でこのお話は終わりです。
第二部の舞台は北海道になります。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……




