終焉の花園
崩落していく幻の城を見ながら、神崎は
「やりよったな、あいつら」
と笑った。
目の前に溢れていた怪異たちは悉く消え失せ、戦っていた人々は安堵の吐息を漏らしていた。それは指揮を執っていた軍馬とて例外ではない。
『おい、神崎。私だ。貴様の策が功を奏したようだな』
神崎のスマホにかかってきた電話からは軍馬の声が聞こえた。これほど疲れた声は聞い事がなかった神崎は
「なんや、お疲れかいな? 若いのに情けないやっちゃのォ」
とからかったが
「黙れ、この件の始末が終われば次は貴様らの大掃除だ。馴れ合いはここまでだぞ」
と突き放された。まだ仲良くなれへんなと独り言ちて、神崎は通話を切る。
「さて、ヒーローを手厚く迎えてやらんとな……」
傷ついた組員たちを病院に運びつつ、神崎は少年と少女の帰還を待ちわびている。
誰もが気付いていない。淡く光る紫色の花が、勝利を嘲笑うかのようにあちこちで咲き乱れていることを。
住吉山手から阪急御影駅まで走り抜けてきたジンと葉村は肩で息をしていた。心臓破りの坂は上るのも大変だが、下るのも大変である。
「これで、終わりか」
ジンは跡形もなく消え去った虚栄の城があった場所を見上げた。その表情は勝利の喜びにあふれているそれには見えない。
「この場は、終わりでしょうね」
葉村もジンの感じていることは分かっているようだ。
見渡す限りの神戸の街に咲き誇る紫色に光る不思議な花々がジンたちを出迎えている。御影駅は美しい花々で彩られているが、それに気付いている人はジンと葉村以外にはいない。
こんばんは、星見です。
次回作を書きたくてうずうずしているのに、つまらない仕事で時間を取られている今日この頃です。
次なるテーマは『部活動』。
さて、もう少しで今作は閉幕です。
今しばらくお付き合いくださいませ。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……




