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幕間:罪過の旅路

  Interlude in


 襲い来るすべての拳を防いだのは炎の壁だった。

「……死にたく、ない。死にたく……ない!」

 少女の瞳に鋭い光が宿る。歯はがちがちと鳴り、手足は震えている。

「私は……生きて、ここから出たい!」

 それでも彼女は指を鳴らす。その意志に呼応したかのように、強烈な爆炎が敵に牙を剥いた。

 たとえ身を焼くような贖いの時が来るとしても。

 たとえ地獄に落ちるような悲劇が待っていようとも。

 その時までは生きるのだ。

「それが君の答えかね……?」

 男の腕のうち三つは千切れていた。脂肪が焼ける悪臭が漂う。

 少女は頷いた。

「そうかね……。本当に、君は愚かだね」

 言葉とは裏腹に男の表情は嬉しそうだった。

「愚かでも……私は生きる!」

 こうやって彼女は成長するのだね。男は依頼者の予想通りに事が運んでいることを実感した。

「本当に……“君たち”は愚かだよ」

 それでも生きるがいいと彼は思った。依頼者の思惑など関係なく。

 選択肢が一つしかなかったとしても、生きている時間は無駄になどなりはしない。

 どれだけの絶望に苛まれようとも、生きていた時間は無為になどなりはしない。

 それは彼が身を以って理解していることだからだ。

 そして、もう一つ彼が理解していることがある。

「だから、終わりにしようじゃないか!」

 男は残った五つの腕を振り上げた。もうかつてのような怪力は残っていないことを承知の上で。

 少女は自身に向けられた暴力の化身を冷たく見つめている。

「七天爆散……デストルーク」

 呪文のように唱えた言葉と共に男の全ての腕が爆ぜた。

「行くがいい……もう私は役目を果たし終えた。君の勝ちだよ……」

「ごめんなさい……」

 謝る必要などないサ。

 男は知っていた。覚悟を決めたならば、彼女は必ずここから生きて脱出すると。彼女がここで倒れるはずがないと。それは予め定められた運命なのだと。

「それでも、ごめんなさい。私はまた……」

 君はきっと繰り返す。殺戮という名の罪過を背負う旅を。

 胡散臭かった男はかつて見せた人懐こい笑みを浮かべて、その場に崩れ落ちる。その姿を誰が見ても、もう助からないと判断しただろう。

「先に逝って見ているサ。君が……どこまで足掻くのか。あの……ハ……」

「見ててほしい。ただし、私はもう諦めない。生きることから逃げない」

 返事はない。

 全くバカだナ、君は。自分を殺そうとした相手に涙するなんて。

 その甘さが命取りになるのかもしれないのだゾ。

 男が出そうとした声は声にならずに、轟々と燃え盛る炎の音へと呑まれていった。


  Interlude out

こんばんは、星見です。

故郷へ帰りたい! そんな思いで最後の転職活動中です。

ちょっと更新頻度遅れるかもしれませんが、ご容赦くださいませ。


さて、幕間の最後です。

葉村ちゃんの過去編はこれにて幕引きでございます。


舞台は再び本編へ。

意外と衝撃なラストが待ち受けます。


ではまた次回お会いできることを祈りつつ……

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