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父親の肖像

「あー、うん。効率的なのはよく分かった。分かったから、校舎を倒壊させない程度に燃やしてくれ」

 ジンが顔をしかめて苦言を呈したが、葉村はどこ吹く風。

 手当たり次第に施設を爆破していく。

「そもそもあのジジイ、お前の雇い主だろ。いいのかよ」

「いいのよ。どうせ放っておいても自滅するし。それに収穫もあったから」

「収穫、ねえ」

「そう。言わなかったかしら? 晶具を使える人間を見つけたことよ」

 目の前にいるだろ、とは突っ込まない。ジンはふとそう思って、一瞬立ち止まった。わずかな疑問が頭に浮かんだが、それは一発の爆炎弾の破裂音と共にかき消された。

「『魔群行進』パンデモニウム。それが、この城の主の宝具」

 目の前に現れた怪物たちを炎の牙で噛み砕きながら、淡々と喋る葉村。

「何でお前がそんなことを知ってんだ?」

「お父さんが教えてくれたから」

 お父さん、ねえ。

 ジンは逡巡したが、葉村はそれを見ても話を止めない。

「この晶具の特徴は怪異を生み出すこと。物量に物を言わせて相手を叩き潰す晶具。本当は他の能力もあるんだけど、使い手は私たちと同じじゃないから使えてないみたいね。そこが救いかな」

 こいつ、どこまで知っている?

 ジンが覚えたのは恐怖感ではない。

「晶具の力を十全に引き出せていない今、勝ち目はある」

 最後の一匹を消し炭にしてから、葉村は断言した。

「私たちが晶具戦で負けるはずがない。負けていいはずがない。だって、私たちはお父さんの子どもたちだから」

 お父さん。

 その言葉を脳裏に焼き付けながら、ジンは葉村の後を追った。

 ここで考えても仕方ない。答えはいずれ出るものと信じて。

こんばんは、星見です。

今月は色々ありまして、執筆がやはり遅れております。

年度末ということもあり、暇ではなくなりそうですが、楽しんで書きたいと思っています。


ではまた次回お会いできることを祈りつつ……

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