幕間:最初の試練
Interlude in
少女の前に敵はいなかった。否、敵はすべて焼き尽くして、立っている者はいなかった。
科学者たちはその凄惨な事実を目の当たりにして、初めて恐怖を感じた。
あれは人間が扱う力じゃない。あれはもう悪魔の力だ、と。
皮膚を焼く臭いがする。
その身に炎を纏って踊り狂う人がいる。
それをただ冷ややかに見つめる少女がいる。
研究所にいた兵士たちでは歯が立たないということをそこにいる全員が理解するのに、それほど時間は必要なかった。
なぜならば、彼女はありとあらゆるものを焼き尽くしてしまったからだ。
生けるものも、死せるものの全て。
そうして、単純かつ明快に彼女は研究所から脱出するはず、だった。
「結局、君は殺してしまったのか……それはいただけないな」
最後に立ちふさがったのは、誰でもない、あの胡散臭い男だった。
「覚えておきたまえ、少女よ。いや……一人の鬼よ」
そんなバカな。彼女は声にすら出せなかった。あの男が最後に立ちふさがる敵になろうとは。
「……まだコントロールできていないようだナ? その晶具を」
「そう、みたい」
「それはそうだろう。晶具はそう簡単に扱えて良い兵器ではないナ。何故だか分かるかね? 今となっては彼がどんな目的でそれらを作り出したか分からないが」
彼は一本の注射器を白衣のポケットから取り出すと、躊躇なくそれを首筋に突き立てた。血管が踊る音が聞こえる。
「彼は間違いなく、自分の子どもたちへの試練として、それを与えたはずだからだ」
筋肉が叫ぶ声が聞こえる。
「これは君への試練だ。見事乗り越えて見せるがいい!」
八つの腕を持つ異形の怪物へと変化した男の声は、炎上する研究所の奥まで響いていた。
Interlude out
こんばんは、星見です。
最近私の周りではインフルエンザが猛威を振るっています。
『絶対包囲』インフルエンザとかいう晶具を出してみましょうか(嘘)
さて、次の幕間で晶具とそれの誕生にかかわる何かが明らかにされます。
そして、そろそろ第一章も終わりに近づいてきました。本当に終わりです。というか、次に行きたいので終わらせます。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……




