血塗られた未来は今
津波のように押し寄せる怪物を目の前にしても、ジンの勢いは衰えることはなかった。手にした得物で斬り倒し、叩き潰し、屍の山と血の河を生み出しながらゆっくりと進み続ける。
神戸海洋学園の一階エントランスには純金で出来た校長の像が屹立している。
「予想以上に悪趣味だな。オッサンの像見せられて喜ぶのは宗教の信者くらいのもんだ」
エントランスから左に曲がり、二階への階段を上ろうとしたところで、ジンは男を見つけた。
「よぉ。あんたが、ここのボスってことでいい?」
「ククク……アウトサイダーめが、口の利き方には気を付けろ。私はこの神戸の王となる者。そして、かの虐殺王米沢昭の後継者となる者」
「今すぐ精神病院に搬送してやろうか」
「その不遜な口を今すぐ閉じさせてやる。まあ、ここで戦うのも品がない。校長室に来るがいい。そこで丁重にもてなそうではないか」
ジンは動きかけた足を理性で止める。
トラップがあるかもしれない。
第六感がそう告げている。
トラップがジンを殺すためのものであれ、ジンを時間的に拘束するためのものであれ、不都合だ。何しろ、この作戦は時間との勝負。ジンが本丸の攻略に時間をかければかけるだけ、竜胆会は不利になり、当然犠牲も増える。
「……間抜け、誰がテメエの言うテリトリーでバトるかよ」
「何を疑っているのか知らんが、この高貴なる私が罠でも張ると思っているのかね?」
「当然だ。テメエのような薄汚い簒奪者が罠なしに俺を殺せるはずがない」
がちがちと歯を鳴らす音がした。
「よかろう! それほどまでに死にたければここで無様に死ぬがいい! 人馬一体! お前の出番だ。このチンピラを嬲り殺せ!」
校長の背後から下半身が馬となった少年が音もなく現れた。その瞳は黒く塗りつぶされ、生気がない。
「私は校長室で待つ。精々、この城の中を探してみるんだな」
「上等だ。テメエは必ず潰す!」
得物の斧を振り上げたのは人馬一体となった少年が校長を守るためだ。
「……哀れだが、始末させてもらうぜ。……テメエにゃ、何の罪もないことは分かっているが……」
拳銃を抜いて、撃鉄を起こす。
「だからせめて……苦しまずに逝かせてやる」
彼もまたアタラクシアの犠牲者なのだろう。
手にかけた者は数知れず。その分だけ彼は殺人鬼へと近づいていく。そして、彼の持つ大剣が目覚めていく。
こんばんは、星見です。
北陸旅行から帰ってきました。
皆様、遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
今年こそはこれを完結させて、残り二つの作品に手を付けたいところです。
今年の目標は部活動というブラック業務(本務じゃないんですけどね)を全部断ること。
(冬季・夏季を除く年間休日20日あるかどうかくらいでした)
原稿を書きあがるためにと自分の研究のためにと自分の将来のために。
というか自分の命を守るために。
ではまた次回会お会いできることを祈りつつ……




