妄執の宴
「オヤジ! 目標、発見。単独で突入します」
ジンが神崎に入れたメッセージはそれだけだった。電話をしている時間すら惜しい。時間は刻一刻と神戸という街を蝕んでいく。
目的地は決まった。
標的も定まった。
ならば、後は敵を屠るだけだ。
襲い来る怪異たちを無感情に薙ぎ払いながら、ジンは阪急御影駅から心臓破りの坂を上り始める。
野鳥がたまに訪れる池の前を通り過ぎ、さらに勾配を増した坂を苦も無く歩き続ける。
灯りのない住宅街はひどく不気味である。人気など皆無で、そこかしこを髑髏の兵隊や狼男が闊歩している様はさながら童話の中に迷い込んだかのようだ。
ジンの健脚は住吉山手の坂を踏破し、十五分とかからずに目的地へと辿り着いた。
神戸海洋学園。
神戸市街を一望できる校舎は見る影もなく変わり果て、魔人を製造する巨城となり果てている。禍々しくも神々しい白光を放ち、夜闇を照らすそれをジンは見上げた。
なるほど、この場所は城に違いない。
それも、ある人間がたった一つの野望のために作り上げた、妄執の城だ。
ジンは無言でその城の門をくぐった。
「来たか……。私がすべてを見通しているとも知らずに……」
くつくつと嗤う男の姿はもはや人のそれではない。
「愚かな木偶人形め。己が出自も知らぬ人間のなりそこないめ。今日こそアウトサイダーに相応しい末期を与えてやろう」
誰もいない職員室で彼は呟く。
「私にはあのお方がいる。あのお方がいれば万に一つも負けはない……。さあ、来い、竜胆会。今宵は私が王となるための前夜祭だ」
こんばんは、星見です。
そろそろペースが戻ってきました。
やる気も出てきました。
色々失敗した一年でしたが、これはこれでよし。
もうすぐ年の瀬ですね。
故郷に帰ることを楽しみに日々過ごしています。
さて、ラストダンジョン突入編です。
ステージ1のボスはもうあの人でしょう。
というわけで次回またお会いできることを祈りつつ……




