幻影城
「ああ、素晴らしい! 素晴らしいぞ! この晶具の力は!」
初めて手にした巨大な力は人を狂わせる。そして、晶具という人智を超えた力は彼を狂わせるには十分だった。
「これさえあれば……私は米沢昭を超えられる……。これさえあれば……あの女でさえも、どうにでもできるわ。邪魔者は殺すんや。誰も彼も死ねばいい。私の教育の邪魔をするのなら!」
校長室でけたたましく嗤う異形の鬼にはもうかつての面影はない。
「私は、最強だ」
狂うということは理性を失くすということだ。そんな彼にまともな判断が出来るはずもない。それが彼の敗因になることは彼女ならば容易に推測できた。
そんな彼女のねらいを考えつかないほどに彼は狂っていた。
もう神戸の街は怪異が闊歩する混沌の都となっている。その都を見下ろす場所に、魔群の王は鎮座していた。何もかもを壊し、何もかもを統べ、何もかもを従える。ただその欲望のためだけに。
彼にはかつての目的は思い出せない。
ただ彼の頭の中にあるのはアウトサイダーを始末するということだけだ。そのためには、どれだけ無辜の人々が犠牲になろうが構わない。無残な犠牲の山羊の群れを積み上げても彼は進む。無数の屍が転がり、神戸が死都となろうとも。
ゆらりと部屋を出た彼は職員室に入り、教師たちに命じた。
占領軍と連携を取り、この神戸でアウトサイダーを殺しつくせ、と。測定された人間力の低い人間をこの世から消し去れ、と。
教師たちは狂ったように歓喜の声を上げ、その手に重火器を握る。もちろん、彼らはそんなものは持ち慣れていない。
熱狂に包まれた神戸海洋学園が変異していることに教師たちは気付いていない。
その姿は淡く蒼白い光を発している幻想的な姿はさながら御伽噺に出てくる城のように神々しくもあり、禍々しくもある。
突如として現れた光の巨城を見たジンは一目で感じた。
あの場所が決戦の場になる、と。
こんばんは、星見です。
色々と忙しく、色々と悩み、体調不良もあり、更新が遅れてしまいました。
申し訳ありません。
今後はせめて2週に1度はアップしたいと思っています(出来るだけ)。
さて、拙作【虚ろな楽園】の売れ行きが気になる今日この頃です。
これは続編に(一応)当たりますので、これも出版出来たらいいなぁと思いつつ書いています。
この一か月にあったことはまた落ち着いたら書きたいと思います。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……




