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失われた眺め

 JR甲南山手駅の近くを歩き回る。うろうろするだけで目に入ってくるのは国連軍の軍服を着た男たちだ。我が物顔で街中を闊歩し、中には略奪行為すら平然と行うものまでいる始末である。

 その光景を見ると、日本は保護国になってしまったのだという認識をせざるを得ない。ジンは日本が独立国だった頃の記憶はないが、知識は持っていた。

「なんか……日本なのに日本人あんまりいないな……」

 ぼんやりと呟いたその感想は正鵠を射ている。現在の日本には日本人は多くはない。極度の少子化が続いており、生涯未婚率は男女ともに五十パーセントを超えているためだ。こうなると、人口は単調減少になり、数学的な計算をするまでもなく、いずれ消滅する。

 もっとも、これについては少子化を些末な問題として放置し続けてきたツケが回ってきたようなものだ。数十年前は少子化などどうでもよく、企業さえ利益を出すことができればそれ以外は放置されてきた時代であったという。

「アホだよなあ、日本人って……」

 常々ジンが思っていることだ。自らの中にも半分日本人の血が流れているが、やはり目先の利益につられて、多くをドブに捨てる選択をしたことは過ちだと断じている。自殺行為以外の何物でもないからだ。

 その虚しい景色に嫌気がさしたジンはJR神戸線に乗った。英語を含めた様々な外国語が飛び交う車内でやはり彼は浮いていた。それは黒ネクタイにスーツという喪服のような姿だからだけではない。

「ヘイ、ジャップ! ゲラウト!」

 その声を聞いて、席に座っているジンは巨漢の金髪外国人を見上げた。複数人の軍人が武器を手にジンを取り囲んでいる。どうやら、彼が席に座っているのが不満のようだった。席に座るのは外国人の特権だとばかりに、出ていけと連呼する。

 いい加減にうざったいと思ったジンは懐に手を入れた。

「ハーイ、私るえびざ正教会ノ大司教、るえびざ=かるどろねす三世ネ! 何ガ起コッタデスカ?」

 そこに現れたのは日本に初めてキリスト教をもたらした宣教師によく似た巨漢だった。彼と違うのは両手にバズーカを装備していることと、首から下げている十字架がキリスト教のものとは少々違うことだけである。

「私ノ客ニ手ヲ出サナイデホシイネ」

 ジンはこの男が守ってくれるのかと思っていたが、それは甘い見込みだったことに気付くのは数分後のことである。

こんにちは、星見です。

夏風邪を引いてしまい、今は布団の中です。

皆様もご自愛ください。


さて今回も出てきたルエビザ大司教。前作の人物と同一人物かはわかりません。謎多き生命体です(笑)


ではまた次回お会いできることを祈りつつ……

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