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幕間:選択肢

 Interlude in


 君はどっちを選ぶんだい?

 葉村綾が戸惑っている中、彼女の脳裏にその言葉が浮かぶ。誰かから問われた言葉だが、誰から問われたのかは覚えていない。

 おそらく、ここで彼女が選ぶのは、戦うか、戦わないか。

 選ぶということと捨てるということは同義だ。人間は数ある選択肢から一つしか選べない。

 外では、金髪箒頭の怖い人が鋼鉄の鎧を纏った巨人へと突っ込んでいる。あの不良男のバットは鎧を溶かすことはできても、鎧の主を倒すことはできないだろう。それは葉村綾から見ても明らかだった。

 君はどうするんだい?

 その問いかけは脳裏に響く。選べ、選べと告げるそれを聞き、葉村綾は迷う。この力を使うべきか否か。元々、彼女は自身が持つ力が何であるかを知っている。それは神様からの贈り物ではなく、悪魔からの呪いでもない。ただ、一人の人間がなしえた奇跡の残滓だ。

 時間は無情に流れていく。選ぶことを躊躇えば躊躇うほど、彼女の味方と思しき青年は死に近づくだろう。

 彼女は知っている。充満する死の臭いも、交錯する死の波形も、狂乱する死の舞踊も。あの地獄のような戦場を彼女は知っている。それ故に、彼女は誰よりも、死という概念を嫌っている。そうでありながら、命令だからという理由で彼女は死を運ぶ爆炎をずっと振りまいてきた。

 それならば。

 彼女は願い、そして足を踏み出した。彼女の戦いは誰かを殺すことではない、誰も殺さない戦いもある。誰かを守る戦いもある。この爆炎ちからはそのためにある。

 彼女は選んだ。力を使うことを。でも、その選択は用意された選択肢から選んだものではない。殺すか殺さないか、命のやり取りをしない第三の選択肢を。

 選択肢とは与えられるものではなく、自らで創り出すものなのだから。

 強い意志を胸に秘め、彼女は竜胆会の事務所から出た。制止の声は意味を為さない。そして、彼女は静かに口にする。自らを鼓舞する、その言葉を。

『七天爆散』デストルーク。彼女の持つ晶具の名を。


Interlude out

こんばんは、星見です。

今年の正月は慌ただしかった記憶があります。仕事はじめは遅いので、気楽にここでのんびりと書くことができています。昨年末でこれを終えたかったのですが、無理でした。出来れば四月までには終えたいところです。


さて、今回の主役は葉村綾ちゃんです。クール系お嬢様ヒロイン?ですが、彼女の生い立ちや物語の裏側にも通じる描写が少し入っています。


ではまた次回お会いできることを祈りつつ……

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