闖入者
夜の神戸を疾走する百台近いバイクの集団は警官隊とヤクザの連合軍を目指して疾走する。
「うぉらぁぁ! どこじゃ、黄島ァ!」
その先陣を切る金髪の箒頭が雄叫びを上げた。それは宣戦布告であると同時に鼓舞でもある。これから戦うことを知らしめるための儀式だ。
ここまでは神崎の読み通りだった。だが、彼らは神崎の予想を遥かに超えてクレイジーだった。
「ブチかませやぁッ!」
敵陣の前で止まるかと思っていたバイクたちは、あろうことかそのまま敵陣に突っ込み、警官隊とヤクザの連合軍を轢き倒してしまった。その様子を見て、胸の内で神崎は合掌する。
「ンじゃ、ワレ! ここにKはおらんのかコラ!」
白い特攻服を着た青年がバイクから降りると、その前に刃金が立ちふさがった。神崎よりもこの男の方が危険だと判断したからだ。その判断は間違いではない。初対面の人間を躊躇なく轢くような人間だ。危ないと思わない方がおかしい。
「そこのチンピラ、名前を名乗るのである。公務執行妨害の現行犯で逮捕する」
まあ当然そうなるわな、と神崎はため息をついた。今更だが、この男を呼んだのは間違いだったのかもしれない。血の気が多すぎる。
「あ? ワレ今なんつったコラ?」
刃金の威圧感をものともしない。
「勝負に部外者巻き込むとか、ワレそれでも漢か! 恥を知れやコラ!」
「……思い出したのである。貴様は広域都市暴走族『武装戦線』ヘッドの烈怒であるな。となれば、貴様もアウトサイダーということになる。ならば……」
「何じゃコラ」
「処刑するのみである!」
「ようほざいたなワレ! よっしゃ! なら俺は名神高速逆走引き回しの刑で勘弁したるわ」
いや、それ私刑じゃなくて死刑だからと突っ込みたくなったが、神崎は黙っておいた。このまま赤木が刃金を潰してくれた方が良い。おそらく半殺しにするだろうが、とりあえずは情報を引き出すことができれば問題ないのだ。
「たかが一不良如きが思い上がりおって……」
「ワレコラ! よう俺をそこらの不良と同じに見よったな。上等じゃゴルァ! タイマンじゃ! テメエら、手え出すなや!」
その命令で赤木の舎弟たちは警官隊とヤクザの連合軍に突撃していく。後方の安全を確認した赤木は背負っていた釘付き金属バットを抜いた。
それに対するように刃金も身構える。得物はない。
「ンじゃワレ? 素手で俺にタイマン張るってかコラ! ナメんのも大概にしろやボケ!」
ふうとため息を漏らす刃金。そこには失望の色が漂う。
「不良如きにはこの知識はないようだな……ダイモニオン!」
その名を口にすると、刃金の全身を灰色の鎧が包み込む。それはほんの一瞬の出来事だ。赤木といえども、隙をついて一撃入れることはできない。
「『鋼武合体ダイモニオン』。鋼鉄の守りを誇る、科学の結晶とでもいえば頭の緩い不良にも分かるであろうか?」
例えるならば、それは頑強なる不落の城塞。襲い来る敵対者を悉く阻む、絶対防御の到達点ともいえる武具。刃金は『鋼武合体ダイモニオン』をそう解釈している。実際、彼がこの鎧を纏って敗れたことは一度もない。
文字通り、鋼鉄の巨人を見ても赤木の闘志は微塵も揺るがない。漢らしくない戦争は彼のもっとも嫌うものだ。それ故に、彼はこの巨人を徹底的に叩きのめすと決めている。
「ほんなら、俺も得物使ったるわ。刮目せえやワレェ!」
赤木の金属バットが紅い光を放ち始める。
今度は刃金が慄く番だった。
こんにちは、星見です。
書きためていたはずのストックが今日この時間を以って尽きました(涙)
本業がクソ忙しいためです。こんなはずでは……orz
でも、頑張って週1掲載を目指します。
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……




