鋼鉄の男
神崎たちは武装を整え、悠々と事務所から出た。
「なんや、物々しいな。“鋼鉄署長”どの」
表情に余裕を見せているのは神崎なりのハッタリだ。有象無象の警官ならともかく、この男が出張ってくるとなると、事は簡単にはいかない。
「わざわざ私が出てきたのである。お前たちはアウトサイダーとして処刑されなければならぬ」
「おいおい……今、ワシらは窃盗も殺人もしとらへんで。麻薬の売人、『鉛筆屋』を捕まえるんが先やないんか? クソ警察官」
「……彼は無罪である。何かの間違いなのであろう」
「ふん、上級国民様は何があっても逮捕せず、か。つくづく腐っとるなこの国は!」
「上の命令である。人間性に優れた者たちは日本の至宝。故に、たかが麻薬密売如きで逮捕するわけにはいかんのだ」
「麻薬密売する人間の人間性が優れてるってどういう理屈やねん? 頭の中まで腐っとるんか? お前ら警察官どもは」
この手の人間は神崎にとって気に食わない連中だ。だが、それでも時間を稼がねばならない。応援が来るまでは。
兵隊をぶつけたところで、数で劣る竜胆会に勝算はない。ましてや、あの大男と対決することになるのは火を見るより明らかだ。この男を倒すには竜胆会の兵隊に多大な損害を出すことになる。下手をすれば全滅だ。
「お前とて、米沢昭の起こした世界的虐殺事件を知っていよう。吾輩たちはあの過ちを二度と起こさぬために人間性を重視した国家に奉職しているのである」
「で? 人間性とかいうネジのぶっ飛んだ基準で選んだのが拳銃すらまともに扱えず、法律の知識もなく、体力もないような、粗大ゴミ以下の警察官たちか? ワシらは別に笑いは求めとらんで?」
「これが世界に求められていることである」
「占領軍に求められていることやろ? 大概にしろや。警察官を無能な奴から順番に選んで誰が喜ぶと思うねん? 犯罪者どもしかおらんやろ?」
「こやつらは無能ではない。人間性に優れている」
そろそろ頃合いか。
あのファイルを預けてくれた五十嵐康太には感謝せねばなるまいと神崎は思った。あのファイルがなければ、“彼”の存在を知ることはなかった。
「よっしゃ! ええやろ、その人間性とやらがどれほど役に立つんか見せてもらおうやないか!」
遠くからは多数のバイクが疾走する音が聞こえてくる。そして、その音は迷いなくこの戦場へと近づいてきた。
おはようございます、星見です。
本業で忙しい今日この頃、休日に仕事をしている有様です。おのれブラックめ。
スマホを買い替えたので、その設定もめんどくさいなーと言いつつ休日が終わっていきます。
さて、今回の黒幕なのか? 鋼鉄署長刃金の登場です。
でかいですね。二メートル(笑)
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……




