極道の意地
ジンとチェグソンが対峙しているのとほぼ同時刻。
警察とチェグソンの部下は竜胆会の事務所前に集結していた。この混成部隊を率いるのは身長二メートルはあろうかという大男である。警察専用の制服を着ていることから、この大男は警察の手の人間であることがわかる。
「ここであるか……竜胆会という組織のヤサは」
立派な口髭をさすりながら、率いてきた部下たちを見る。この壮年の巨漢は部下たちをまったくあてにしてない。拳銃すらろくに扱えない部下をあてにしろという方が間違っているのだから。
「神崎秀人! 私は警視庁の刃金である! おとなしく投降すればよし。さもなくば、お前たちを全員処刑する!」
巨漢はその体躯に見合った声で神崎に問いかける。事務所の中にいると思しき神崎は沈黙を守ったままだ。
「既に裁判所から死刑許可状は得ている。お前が我が要求を呑まねば部下どもを全員殺しつくし、我が平和国家への供物としてくれよう」
事務所で待機している神崎はこの似非平和主義者めと胸の内で罵った。おおよそ平和平和と口にするのは大抵の場合その真逆の行動をとることが多い。
「もう一つ警告する。お前たちがかくまっている葉村綾の身柄の引き渡しを要求する! 拒否すればその女の命はないと思え!」
女子供でも容赦なしか。
神崎にとってはこれだけでもこの巨漢を粉砕する理由になる。どうせ、引き渡したところで殺されるのだろう。
「私、出ていきます」
事務所で息をひそめていた葉村は神崎に提案する。
「私が出ていけばここでの争いは鎮まります。竜胆会にご迷惑をおかけするわけには……」
「ドアホ! 小さな女子一人守れんで何が極道じゃ。ワシらのことは気にするな。こんなこともあろうかと備えはしとるわい。葉村ちゃんは大人しゅうここで待っとればええんや」
その備えとは軍馬のことだろうと葉村は予想した。だが、軍馬は曲がりなりにも警察組織の人間だ。この状況で動けるはずがない。
「軍馬さんなら来れません。あの男は……」
「知っとる。“鋼鉄署長”やろ、あのデカブツは。やから別の援軍呼んどるわ。なに、ダークサイドはダークサイドなりのパイプっちゅうもんがあってやな。とりあえず、そいつ来るまで凌ぐで。星崎! 迎え撃つぞ! 全員死なん程度に暴れろや!」
こんばんは、星見です。
最近自分の周りで驚くことばかりで何だか良い意味で夢を見ている気分です。
さて、鋼鉄署長というボスクラスのお出ましです。どうなるんでしょうね?
ではまた次回お会いできることを祈りつつ……




