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戦争の始まり

「マッタク、コノ国ハ信者ガ増エナイネ。モウコウナッタラ洗脳シテ金ヲ集メルシカ……」

 危険な発言を堂々と宣っている中年の宣教師風の男は、夜更けに日本酒の瓶をラッパ飲みしながら、三宮の繁華街を歩いている。首から下げているのは逆十字架のペンダント。

「保険金詐欺ガシニクイナンテ世モ末ネ」

 かつて日本にキリスト教を伝えた人物によく似た男は文句を垂れながら遊郭へと足を運ぶ。そして、そこでさんざん遊んだ挙句、延長料金を堂々と踏み倒すという暴挙に出た。

「私ガ私ノ金ヲ払ウナンテ間違ッテルデスネ! ッテコトデ、ですとろーい!」

 追手の男たちを悉くバズーカでぶっ飛ばしながら逃走する男。その情報は売春宿の経営者であるドン=チェグソンにも即座に伝わった。

「構わん、ぶち殺せ! 三宮の支配者が誰だか教えてやれ」

 チェグソンの部下たちは男の捜索と抹殺に総動員された。

 ジンが好機と踏んだのはこの時である。もちろん、ジンにはこの騒ぎの元が先日JRで暴れまわった人物だということは分からない。

 ヤクザと思しき男たちが出て行った雑居ビルに歩を進めるジン。その背中には使い慣れた巨大な剣が背負われている。

「止まれや、オラ」

 荒々しい声がその場に響いた。

「お前はアウトサイダー、だな?」

 質問の形をとっているが、男はジンがそうだと断定している。

「そんな訳の分からんモノになった覚えはない。そういうお前は……ドン=チェグソンか?」

 男は笑いをかみ殺した。野生的な顔が歪む。

「そうだ。この街の支配者だ。冥土の土産にでも覚えておけ、とでも言えばいいか? ジャパニーズ」

 ジンと同じ黒のスーツをきっちりと着込み、赤いネクタイを締めた壮年の男は拳銃以外の武器を一切持っていなかった。眼帯をしていない方の目、左目は邪欲にまみれた者のそれだ。

「それは丁度いい。テメエを始末すれば、この街も少しは静かになるってもんだ」

 ジンは巨剣を手に取り、正眼に構える。

 チェグソンはその総髪を掻き上げ、嘲笑った。

「オイオイ……竜胆会の兵隊ってのはこんなにおバカなのか? 俺が一人で来ているわけないだろうが! オラ、ポリ公ども! このクソガキを始末しろ!」

こんにちは、星見です。

何だか10月なのに暑い日が続きますね。地震の前触れでなければいいのにと思わざるを得ません。

さて、急に忙しくなった本業なのですが、何とか週1ペースで更新したいと思います。


いつのまにかチェグソンがただのチンピラに成り下がってしまいました。


ではまた次回お会いできることを祈りつつ……

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