いつもの朝
3月14日
俺にとって中学生最後の日になる筈だった…
その放送を聞くまでは
「ジリリリリリリリリリリリリ」
耳障りなサイレンの音で目が覚めた。眩しい朝日、鳥の鳴き声、包丁の音、なんとも爽やかな朝だが正直どうでもいい、昨日…いや今日の2時くらいまでずっとネトゲをやっていたため睡眠時間が足りておらず今、非常に眠い。きっと今鏡を見たら寝癖で髪はボサボサで、死んだ魚のような目にくままでできていてそれは酷い有様だろう。
何故俺、上野契太がそこまでネトゲに熱中しているかというと、父親がそれ関係の会社の社長をやっていて、そのため子供の頃からちょくちょくやっていた。それがどんどん悪化していき、いまに至る。だけど何故か視力検査ではずっとAをキープしている。けど、引きこもって一日中やってるというわけではない。ちゃんと学校には行っているし、授業もしっかり受けている。
じゃあ、何故親はこんなくさった様な生活を送っている息子に何も言わないかというと、自分で言うのもなんだが、俺がめちゃくちゃ頭がいいからである。いや別に自慢じゃ無いし、冗談でも無い。テストは毎回学年1位をキープしてるし、高校もここら辺で有名な名門校へ推薦で入学が決まっているのでこんなことをしててもあんまり叱られたりはしない。(ま、他にも理由はあるが)でもさすがにこの生活リズムは直さないとマズイ。おかげで今日もあと少しで眠気に負けて二度寝してしまうところだった。いや〜危なかった。
やっと立ち上がり、顔を洗うために洗面所に行くと妹の美雪が髪を整えていた。俺に気付くと、
「おはよ〜、お兄ちゃんまた夜遅くまでゲームしてたでしょこのままじゃニート決定だよ」
「うるせぇよ、ほっとけ」
どこで育て方を間違えたのやら、昔は「お兄ちゃ〜ん」などと可愛かったのに、今ではこんなクソガキになってしまって。
「てか起きるの遅いよお兄ちゃん、朝ごはんもう出来てるから、顔洗ったらさっさと食べてね」
「お前はもう食べたのか?」
「もうとっくに食べたよ。私はお兄ちゃんと違って規則正しい生活してるから」
「あっそ」
いつも一言多いわ。
顔を拭いて席に着くとテーブルの上には茶碗によそってあるごはん、焼き魚に、豆腐とわかめの味噌汁が置かれていた。上野家では、基本的に妹が食事を作っている。父親は単身赴任中だし、小説家の母親は言っちゃ悪いが超がつく程だらしなく、家事は一切やらず仕事部屋に閉じこもりずっと小説を書いている。これが俺が何も言われないもう一つの理由である。なので家事は俺と妹で分担してやっている。
「お兄ちゃん、私もう行くからちゃんとお皿片付けといてね」
「わかってるよ」
「よろしくね、行ってきまーす」
「行ってらっしゃい」
「ごちそうさまでした。さて、着替えるか」
俺が着替えていると仕事部屋から声が聞こえてきた。この声は母さんだ。
「次の小説が大ヒットしたらどこ行こうかな〜フランスとかいいわね料理も美味しいしグアムもいいわねエヘヘへ〜」
先の事でなく今ある原稿を終わらせて欲しい。
さて、もうそろそろ俺も行くか。
「母さん、朝飯テーブルに置いてあるから」
「ん、わかった〜」
「行ってきます」
「行ってらっしゃ〜い」