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「あ、あの、ですね。測定は終わったんですけど……その、結果が、これです」


 非常に歯切れが悪い。口で伝えるより早いと思ったのか、紙をこちらに渡してきた。


 魔力量:黒

 適性 :無・雷・空


 ミコちゃん。何も伝わらないよ。さっぱりわからない。


「説明を頼むよ」

「えと、ご存知ではないんですか?」

「全くわからないから、解説よろしく」

「は、はい。まずですね……


 どうやらかなり常識的なことを聴いてしまったようだ。だが知らないものは聴くしかないだろう。それに、椅子を持参でギルドに来ている段階で変人認定されているだろうから、今更どう思われても関係ないだろう。むしろ、一対一の状況だし積極的に分からないことを聴いておこう。


 ミコちゃんの説明を纏めると、魔力量は大まかに色で識別されていて、少ない方から


 緑:平均-

 黄:平均

 橙:平均+

 赤:普通の魔術師レベル

 紫:上級魔術師レベル

 黒:宮廷魔術師レベル


 緑~橙までは大した差はなく、赤以上でないと魔術を主体に戦うことは難しいとのこと。黒までいくことは滅多にないようで、そこに驚いていたのだろう。ただ、測定機の都合上、赤以上は同じ色でも振れ幅が大きいために参考程度に考え、自分で見極めるしかないようだ。意外と大雑把な測定だったな。


 適性に関してはそんなもの無いと思っていたのだが、実際は雷系統と空間系、身体能力強化の無系統が使えるようだ。そのほかには火・水・風・土・氷・光・闇系統とあり、最初の4つと無系統が一般的で、だいたい1人1つは適性があるものだそうだ。かなり魔術が一般的に使われる国みたいだ。せっかく適性が有ることが分かったことだし、金を稼ぎつつ練習してみるかな。


 ミコちゃんが驚いていたのは滅多に見ない黒の魔力量と、かなり珍しい空間系統の適性を一度に見たからと言っていた。魔術に関する初歩的な質問にも驚いたようだが。


 ついでに、こちらのギルドの制度についても説明してもらった。


 依頼についてはホールにあった掲示板に掲出されたものを選んで受注するか、依頼主からの直接の指名、全ギルド員に出される緊急依頼の3種類がある。指名と緊急は当分関係ないので端折りますね、と笑っていた。掲示依頼は受けられる下限がきまっていて、その依頼の記載下限ランク以上のランクでないと受けられない。ランクはE~A・S・SS・SSSになっていて、Cからが一人前と見做されるらしい。Sより上は才能と努力が必須で、Sランカー以上は英雄的な存在で、SSSなどは振り切れ過ぎて化け物レベルと言っていた。因みにSSSは現在2人いるとのこと。性格が破綻してなければ是非会ってみたい。


 ランクアップはギルドへの一定の貢献と実力を判断して行われるもので、個人差がある。大体は10回ほど依頼を熟せればいいようだ。あまりに失敗を繰り返すとギルドからの除籍処分になる。このあたりの詳しい判断基準についてはギルド職員でも知るものは多くないようで、ミコちゃんも知らないと言っていた。ランクアップなどの恣意的な操作の恐れがあるのでは、と聞いたところ、経験則でなんとなくはラインがわかるので冒険者もさして気にしていないとのこと。実際、ギルドの信用にかかわることなので、そういった前例は殆ど無いらしい。



 ……といった様になっています。なにか質問はありますか?」

「いや、ないよ。基本的なことまで聞いちゃって悪かったね。ありがとう」

「いえ、これも仕事の内ですから。なにか分からないことがあれば遠慮なく聞きに来てくださいね」

「そうさせてもらうよ」

「はい。それでは登録を完了させるので、もう一度手を入れてください」


 説明を受けるうちに出していた右手を再度箱の中に入れる。手の甲に魔術的な刻印が施されているのを感じる。先ほどの説明によると、普段は不可視化されていて、僅かな魔力を通すことで可視化させることができるもので、この刻印が身分証になるようだ。


「完了しましたので、一度確認させてください」


 右手を差出し、軽く体内の魔力の流れを刻印に触れさせるように流す。

 薄っすらと発光した黒い刻印が浮かび上がってくる。円の中にEの字を模したデザインだ。


「確認できました。これで晴れてギルドの一員です。シラヌイさんの活躍をお祈りしています!」

「しばらくはこの街にいる予定だから、よろしく」

「はい!頑張ってくださいね! あ! あとですね、刻印の色は自分の魔力量を表す色以下なら好きなように変えられます。剣士のかたが敢えて下のランクの色にして、自分に魔術を期待させないようにしたりしてますね。魔力量と魔術の得手不得手は関係ありませんからね」

「なるほど。俺も前衛だから……赤ぐらいにすればいいかな?」

「はい。問題ないと思いますよ。赤で無系統適性なら有望な前衛と見る場合が殆どで、魔術に期待はしないですからね」

「よし、赤に変えておこう」



 手の刻印を黒から赤に変えて、このあとはどんな依頼があるか確認してから宿に行ってみるか。そういえばテノンに家具屋の情報聞き忘れたな。


「あの、シラヌイさん?」

「ん? なに?」

「さっきから気になってたんですけど、どうして椅子を持ってるんですか? それ、うちのじゃないですよね?」



 大人の対応か、受付嬢としての奇人変人慣れだと思っていたが、単に言う機会を待っていただけのようだ。ほっといてくれよ。











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