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006

 ミコちゃんが渡してきた紙には、少し崩れた文字で書かれた幾つかの記入欄があった。書ける範囲でいいらしいが、公的な物なのでキッチリと記入する。


 名前:シラヌイ

 年齢:26

 性別;男

 種族:人間

 出身:不明

 武器:刀剣類


 項目は意外と少なく、戸籍なども必要ないようだ。こんなもので安易に身分証になるようなものを発行していいのかと気になるが、恐らく、なにかあれば処分することができるということを暗に伝えているのだろう。

 全部キッチリ記入するつもりだったが、出身ばかりは分からない。本当に分からないのだからしょうがない。親も親戚も会ったことはないしな。


 記入を終えてミコちゃんに紙を返すと、

「シラヌイさんって26歳だったんですか!? もっと若いのかと思ってました」

「そうですか? 自分では年相応だと思っていましたが」

「そ、そんな敬語なんて使わないでください。私より8つも年上なんですし、普通でお願いします!」


 ミコちゃんは18なのか。もう少し若いのかと思っていたが。それにしても、さっきのことがあるのにフレンドリーだなぁ。周りの人に気にかけられるのも納得だ。


「そう? それでいいなら、そうするよ。よろしくね」

「はい。 あ、申し遅れました、ミコです。よろしくお願いします」

「うん。 登録はこれだけで完了?」

「いえ、まだです。次に魔力の測定と適性の確認をするので着いてきてください」


 そう言ってカウンターを出てくると、掲示板横の扉を開け奥へと進んでいく。扉の先は機能性とコスト重視のホールとは打って変わり、草花の模様が入った壁をやわらかく落ち着いた照明が照らす上品な廊下になっている。右手の椅子と相性が良いな。


 この測定の結果如何によってはギルド加入に制約でもつくのだろうか。魔力量はかなり多いので心配はないが、魔法自体は扱うことが出来ないので適性は無しになるだろうな。


「こちらです。どうぞ」


 通された部屋は6畳ほどの広さで、部屋の中央に受付にあった黒い箱が置かれた机と椅子が4脚あるだけだった。今や5脚だが。促されて椅子に座る。


「この箱、魔登録機で測定からギルド登録までを行います。そちらの穴に手を入れてください。左右どちらの手でも構いません。あ、測定結果での有利不利はありませんから心配なさらなくても大丈夫ですよ!」


 聴こうと思っていたが、先回りして教えてくれた。不安に思う奴が多いのだろう。しかし、登録者全員に適性検査をするということは、それだけ魔法適性のあるやつが多いのか?まあいい。どっちでもいいらしいので右手を穴に入れる。


「それでは始めますね。暫くじっとしていてください」


 右手の甲に微少な魔力の干渉を感じる。直接体内に干渉して魔力量と適性をみるのだろう。それなりに正確性は高そうだ。


「あと1~2分で結果が出ますので、もう少しお待ちください」

「わかった。ところで、この街で美味しい料理を出す店か宿を知らない? 今日ここに来たばっかりで何も知らないんだよね。あ、出来れば値段も手ごろなとこで」

「う~ん、そうですね…ギルドを出て左手に進んで最初の角を左に曲がった先にある宿屋さんですかね。ギルドからはちょっと遠いんですけど、値段も手ごろで、なかなか料理が美味しいみたいですよ。夫婦で経営してる小さいところなので気をつけてないと通り過ぎちゃうって聞きました。もし満室でしたら、ギルドの右隣にある『泊まり木』がいいですよ。値段も料理も可もなく不可もなくってかんじなんですけど、大きめの街ならどこにでもある有名宿ですから。あ、最初に言った方の名前はですね、たしか、えっと…『小人の家』です。間違いないです!」


 もしかして宿の名前が出てこなくて最初に言わなかったのか?


「ありがとう。小人の方にまずは行ってみるよ」

「どういたしまして。といっても私は行ったことはないんですけどね。でも先輩から美味しいと聞きましたので、きっと満足できますよ!」

「期待しておこう。 そうだ。サングレっていう街を知らないかな? そこに行きたいんだけど」

「サングレ、ですか? すみません。私は聞いたことが無いです。受付として地理的な勉強もしているのですが、まだまだですね」

「いや、知らないならそれでいいんだ。気にしないで」


 かなり大きい街なんだがな。それを知らないとなると、余程遠いところなのか。これは帰るのが大変そうだ。

 少し話す内に測定が終わったらしく、箱の後ろから出てきた紙を見てミコちゃんが固まっている。


「どうした?」


 チラチラと視線が紙と俺の顔で行き来している。なにかマズかったか?





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