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 ~side ルヴィエール~


「ナーク、それはちょっと……」

「おま、そこまでじゃねぇだろ! ちゃんと話してやるから、顔貸せ!」


 ナークさんがご主人様を引き摺ってカウンターの方へと行ってしまいました。こうなった原因は、ご主人様がナークさんに年齢を聞いたことでした。もう少し上だと思っていたのですが、ナークさんは今30歳とのことで、彼女のロッカさんとは少し歳が離れているなと思ったところ、ご主人様が代弁して下さりました。ロッカさんは19歳だそうで、私と1つ違いでした。

 そこからはお二人の馴れ初めを聞いたのですが……付き合い始めはロッカさん15歳の時だそうです。これでも随分早いなと思ったのですが、ナークさんが恋をしたのが……ロッカさんが11歳で外で遊んでいるのを見た時。その反応が『それはちょっと……』で、ご主人様は連れていかれたのです。正直、少し引いてしまいました。ご主人様に少女趣味が無くて本当によかったです……ないですよね?


 そして、ひとつ困ったことが……


「ルヴィーちゃーん。どうしたらそんなにおっきくなるのー?」

「種族、的なものでしょうか? よくわかりませんが」

「じゃー私にもその巨乳をわけてー」

「え? あの、身長のことじゃなかったんですか?」


 身長のことかと思えば、胸のことでした。そういえば視線が……そんなに欲しいのでしょうか? これがなければ、少しは服の選択肢も増えますし、足元が見やすくなるのですが。シャツのボタンを飛ばしてしまった時は恥ずかしかったですし、身長が大きいからって何も胸まで大きい必要はないのに……。


「あ! ルヴィちゃんを食べればいいんだよー!」

「え? あ、ダメです! 食べられませんよー!」


 ロッカさんは酔っ払いすぎですよ……私の手を食べても何も変わりませんよ。現実を見てください。それに、ロッカさんは大きくなくても十分魅力的です。


「むむ、残念。そういえばールヴィちゃんはシラヌーとどこまでいったー?」

「へ? ど、どこまで、というのは……」

「隠さなくてもいーじゃーん。シラヌーのこと好きなんでしょー? それにシラヌーはご主人様なんだしー」

「な、なんでですか? 私は、別にっ」

「ふふーん。顔真っ赤だよー?」


 咄嗟に顔に手をやってしまった私を見て、更にロッカさんがニヤニヤしています。な、なんで気付いたんでしょうか。うぅ、顔が熱いです。

 でも、ここまで気付かれているのなら、いっそ相談してみたほうがいいかもしれません。きっと頼めば他の人には言わないでいてくれるでしょう。それに、ロッカさんはナークさんと付き合っていますし、良い助言が頂けるかも! 幸い、ご主人様はナークさんに捕まって話し込んでいますし。


「そ、その、誰にも言わないで下さいね?」

「お! うんうん、だいじょーぶだよー。私は恋する乙女の味方だからねー!」


 ほ、本当に大丈夫か少し不安になってきました。いや、最初から不安ではあるのですが。


「えと、この間から寝る時に、て、手を繋いで頂いています」

「それでそれで?」

「それだけ、です、けど?」


 そんなに意外だったのでしょうか? いえ、ご主人様にお仕えし始めた頃の私もそんな感じでしたね。抱かれる覚悟もしていましたし……あの頃は空回っていましたね。


「シラヌーは男の人が好きなのかなー? こんなに可愛くて綺麗な娘がいるのに手を出さないなんてっ! 絶対おかしいよー!」

「そ、そんな……ご主人様……もしかして、ナークさんみたいなのが!?」


 有り得ないとは思いますが、カウンターの方を見ると2人とも楽しげに談笑しています。も、もしかして本当に? 嘘です! で、でも、ご主人様から私に触れてこようとしたことは少ないですし、やっぱり……だからずっと同じベッドで寝ていても何もないのでしょうか。むしろご迷惑に? いえ、それなら私の屁理屈で未だに同じ部屋で寝てはいないでしょうし、手だってきっと繋がないはずです! ということはご主人様はやっぱりそうでは……な、ナークさんの肩にご主人様が手をかけて……それでは、やっぱり?


「みたいなのとはなんだー! 怒っちゃうぞー! あれ? おーい。ルヴィちゃーん。ルヴィちゃんてばー」

「……? は、はい。なんでしょう?」

「さっきのは冗談だからねー? それに、シラヌーにナークは渡さないもんねー!」

「そ、そうですよね」


 冗談。そう、ロッカさんの冗談ですから、私のご主人様が男色であるわけがないですよね。そうに決まってます。


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