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 その後、ロッカはルヴィに「あ、ちょっとヤバいかも」と思うまで訓練をするように言い、俺の実力拝見となった。


「魔術なら見せただろう?」

「纏雷しか見てないよー。他のやつ見せてよ、本気のやつねー」


 他といっても、サンダーボールとサンダーアローくらいしか知らないぞ。サンダーレディエイションもあるが、纏雷の下位魔術だしいいだろう。標的はルヴィが狙っている岩の隣のやつでいいか。


「じゃあ、サンダーアローから」


 以前より一本増えて雷の矢を6本、自分の背後に半円状に展開し、同時に同一目標に向かって放つ。バチバチと音をさせながら真っ直ぐに岩へと飛んでいき、着弾すると拳大の真っ黒な焦げ跡が一つついた。岩の下には幾つかの欠片が転がっているので、少しは岩の表面を抉ることができたようだ。破壊力は上出来だろう。一点に集中して命中させられたようだから、精度も文句無しだな。


「次は」

「待った!」

「ん? どうした?」


 早速次にいこうとしたら止められてしまった。何か非常識なことでもしたか? ルヴィは全く気にせずに練習を続けているしなぁ。


「……どうしたじゃないよー。私、本職だよ? そこそこ出来るほうだよ? それでもファイアーアロー4本同時が限界なんだよ? 教える必要ないじゃーん!!」


 確かに6本同時は難しいから、展開数が増えれば難易度が上がることはわかっていたが、本職でも4本? もっと多く出せるものだと思っていたが違うらしい。魔術の基礎なんたらには書いてなかったし……そもそも同時展開について記述が無かったっけ。上級とかがあれば読んだ方がいいな。他の魔術もそろそろ知っておかないといけないだろうし。


「しかも、あの命中精度は何!? ほっとんど同じ所に中ってるじゃんかー! 纏まりすぎだよー!」

「そんなに、なのか?」

「なっ……知ってたよー自覚ないことくらいー。あーあーやってらんなーい。これからはルヴィちゃんだけ教えるよー」


 まずい。いじけてしまった。普段からは考えられないほど投げやりな状態だ。足元の小石を蹴り出してるし。


「いや、悪気があったわけじゃないんだ。すまなかった」

「……シラヌーはほんとに常識なさすぎだよー」


 ふくれっ面だが、なんとか大丈夫そうだ。夕飯はご馳走しよう。


「すまない。できればその魔術の常識を教えてくれないか? 一応、簡単な本は読んだんだが、言われたような常識は書いてなくて全くわからないんだ」

「何読んだの?」

「魔術の基礎なんとかって本だ。ギルドの資料室にあった」

「…………」


 まさしく絶句といった表情で固まっている。そこから非常識だったのか?! 俺は出だしでつまずいてたのか?!


「あー、そこから間違いか?」

「たぶん魔術の基礎・全系統網羅版ってやつだよねー?」

「そうだったと思う」

「あの、それは……」


 ロッカも、途中から聞いていたルヴィも揃って同情の眼差しだ。ルヴィも知っているのか……


「ルヴィちゃん、こんな人に仕えるのは大変だろうけど、頑張ってね」

「待て。そんなにか? 理由を教えてくれ、理由を」

「その本は題名が真面目っぽいけどね、子供向の絵本みたいなもんなんだよー」

「………」


 俺が絶句する番になった。冗談だろ?


「いや、子供向にしてはしっかりしてたぞ?」

「まー貴族の子達向けだからねー。具体性はあんまりなかったんじゃないかなー」


 確かに、何度かそう思った。挿絵も豊富だった。


「具体的なことは家庭教師に聞いて教えてもらうから、あんまり書いてないんだよねー。挿絵も多いし」

「……そうか。戻ったら、ちゃんとしたやつ、読むよ」

「そんなに落ち込まなくても大丈夫だよー?」

「そうです! そんな本でも魔術が使えるようになったご主人様は凄いです!」

「そうそう。あの本で纏雷まで行き着いたんだから、それで十分だよー」


 ロッカに励まされるなんて思ってもみなかった……明日はルヴィをロッカに預けて、資料室にこもってやる。今はお子様向けの知識しかないが、明日には魔術師を自称出来るようになってやろうじゃないか!




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