050
「た、確かにそう考えるほうが自然です」
「チッ、リスカ。騎士団に連絡入れろ。あとシラヌイが見つけた現場に人をやれ。それからカシアとパーティーの過去の記録を洗え」
「はい!」
昨日の懸念が完全に当たったか……まぁ、ここから先は俺達に関係のないことだ。襲われないように気を付けるくらいしかすることはないだろう。あぁ、忘れてた。
「昨日のうちにカシアを今朝呼び出すことを知っていた奴に気を付けた方がいい。俺とルヴィも対象になるが、その中に内通者がいる可能性が高い」
「……そうだな。リスカ」
「昨日の段階で知っていたのは……ここの4人を除いて、一人です」
「誰だ」
「カティ、です」
カティさんか。古株の受付嬢のようだし、そんなことをするようには思えないが……話を聞いて何も出てこなかったら暫く面倒なことになるな。俺達は疑問を呈してカシアを追い詰めた形だから余り疑われないとは思うが。
「カティを呼んで来い。お前たちは帰っていいぞ。後日騎士団に呼び出されるかもしれないが」
「わかった。何かあったら知らせてくれ」
「失礼します」
退出しようと席を立った時、扉の近くに人の気配を感じた。
「入れ」
ずっと思ってたんだが、誰なのか確認したほうがいいんじゃないか? 変な奴が入ってきても困るだろうに。
扉を開けて入ってきたのは、遺留品の検分を頼まれていたマイヤーさんだった。最近ヒゲを伸ばし始めたため、増々ワイルドになってきている。
「支部長、色々わかったぜ。ん? シラヌイとルヴィもいたのか」
「聞かせてくれ。お前らも聞いていけ」
「あぁ、まず、これを見てほしい」
マイヤーさんが脇に抱えていた黒革の鞄からテーブルの上に出したのは、折れた剣だ。
「これなんだが、切断面が綺麗すぎる。魔獣に襲われたなら、こんな折れ方はしない。剣で、それも斬鉄の出来る奴に斬られたとしか思えない」
「それは確かか?」
「鍛冶屋のオーヘンのとこにも行って確認したが、おんなじ見立てだったぜ」
あの時はよく確認しなかったからわからなかったが、確かに斬鉄が出来る者により斬られたようだ。それも力任せではなく、しっかりとした技量で切断されている。
「シラヌイ、オーヘンに斬鉄ができると聞いたが、お前も確認してくれ」
烏羽の試し斬りで折れた剣を斬ったことをオーヘンさんに聞いたようだ。この流れで聞かれると困るなぁ。俺が切ったと思われるんじゃないか?
「確かに人為的に切断された、斬鉄のあとだと思います」
「……お前、本当に出来るのか」
「ご主人様は切ってませんよ!」
支部長の目が心なしかきつくなったように思う。お互い仲が良いわけでもないし、致し方ないだろう。
「一応言っておくが、俺は切ってないぞ? それに、俺が切ればもっと美しい切断面になる。その程度の技と比べるなよ」
「そ、そうか。それから防具なんだが、2種類の傷が最近ついたものがあった。一つは錆びた剣で力任せに。もうひとつは斬鉄と似たような傷だ」
マイヤーさんが次に出した革鎧を見ると、錆の色が付いた傷があることがわかった。斬鉄のようなってのは、新しそうに見えるやつか?
「それに盾だ。この二つで共通してるのは錆び色の傷だ。ゴブリンとでも戦ってたんじゃないか?」
「その通りです。彼らのパーティーはゴブリン駆除依頼を受けていましたから」
「つまり、革鎧のほうの傷はカシアがやったかもしれねぇってことか」
「あの、そもそもカシアさんは斬鉄ができるのでしょうか?」
最近はルヴィもしっかり話をするようになってきた。以前は人前だと遠慮していたが、支部長相手でも余裕だ。あまり好きでないということもあるのだろうが……で、言いたいことはわかるが、皆してこっちを見ないでくれ。
いつもお読み下さり有難うございます!
大変申し訳ありませんが、本日より投稿が不定期になります。
最低でも週に一度は更新致しますので、今後もお付き合いください。




