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 さすがにあそこまで食うと胃がもたれる。ルヴィはなんともなさそうだ。食事で張り合うのはやめた方がよさそうだ。


「さて、どんな話が聞けるかな」

「嘘でも本当でも嬉しくないですね」

「そうだな。ま、本当なら討伐すればいいだけだ」


 ギルドホールに入るといつもより人が少ないようだ。込み合う時間を避けたとはいえ、いつもはもう少しいたはずだ。体調崩す奴が例年より多いと、マルニエが言っていたな。冒険者、体弱すぎだろ。


 受付を見ると猫耳がいた。真っ先に体調崩しそうだが、元気そうだ。冒険者よりギルド職員のほうが丈夫なんじゃないか?


「おはよう」

「ミコちゃん、おはようございます」

「おはようございます! お二人は元気そうですね。あ、支部長ですよね? 勝手に上がってこいって言ってましたよ」

「ありがとう」

「失礼します」


 支部長室に向かう途中、治療室の前には変わらず薬草の束が積み上げられていた。マルニエは暫く体調を崩した奴らの対応で忙殺されそうだ。忙しさのあまり体調を崩さなければいいが。


 階段をのぼり支部長室に近づくといつも通り声が掛かった。


「入れ」


 今度こっそり近づいてノックしてやるか。ルヴィにそろそろ気配の断ち方を教えるかな。


 支部長室に入ると、あからさまに不機嫌な顔をした支部長に出迎えられた。そんな顔を見ても嬉しくないので、隣に座っているリスカを見るが、こちらは眉間に皺をよせている。支部長が大嫌いな面倒事が起こったようだ。


「おはようございます」

「どうしたんだ?」

「ついさっき情報が入ってな……逃げられた。今朝方カシアの、例の奴の宿に人をやったんだが、もぬけの殻だった。宿の女将も鍵を返してもらってはいないらしくてな」

「つまり、虚偽報告だったとみて間違いなくなったわけか」

「そうだ。遠慮せずに昨日締め上げりゃよかったぜ」


 そうなると、やはり四人の死因が気になるな。


「捕まえに来たことがわかって急いで逃げたのでしょうか?」

「いや、奴の部屋は中庭に面してて、今朝早くから従業員が庭の手入れをしてたって話だ。宿の入口は一つしかねぇし、そこはうちの連中がおさえてた。当然中庭もな。だから夜のうちに逃げたんだろうよ」

「捕まえるように指示は出していますが……夜のうちに逃げられたとあっては難しいでしょう」


 内通者か? 本当に面倒なことになってきたな。


「オルトロスはいないと考えると、4人は何に殺されたんだろうな。カシア? のパーティーの情報をくれないか」

「パーティー名は、自由への道。トップチームの自由の翼にあやかったんでしょう。ランク平均はC。5人パーティーで構成は、前衛3の魔術師1、弓師1です。前衛の1人はカシアの奴隷と言っていました。魔術師がリーダーで、勝手に依頼を受けたそうですが、依頼は小規模なゴブリンの巣討伐でした」


 平均Cランクで小規模なゴブリンの巣討伐……付近に巣らしきものはなかったから、もっと森の奥に入っていたんだろう。


「昨日伝えた現場の森の奥は危険なのか?」

「はい、少々強い魔獣が出やすいです」

「しかし、見つけた場所はそこまで深くなかった。いくらゴブリン討伐で負傷していても4人も死ぬのか? 平均Cなら一人前だろう?」

「珍しくサーベルドッグの集団に襲われたとかしなければ……」

「それはないだろう。それなりの剣が折れていたんだ。この辺に剣を折ることが出来る魔獣はどれくらいいる?」

「オルトロス、オーガ、トロール、ロックタートルとかがいるが……どれもデカかったり、すっとろかったり、珍しかったり、とまぁ当てはまりそうもねぇな」

「そうか……あぁ、魔術を放った痕跡もなかったな。矢は折れたものだけで放った形跡なし。周囲は荒れず綺麗なまま……」


 眉間に深い皺を刻みながら、じっと支部長が睨んでくる。リスカも信じたくないといった表情でこちらを見ている。ルヴィは横にいて見えないが……きっと悲しそうな顔でもしてるんだろう。


「それは、つまり、カシアに殺されたって言いてぇのか?」

「そうだ」



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