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「串山だよ! もう食べちゃったんだ。早いね! 最速記録かも!」


 皿が空くと同時に山と盛られた串焼きが出てきた。いいタイミングだ。また物欲しそうに厨房を見つめられても困るしな。


 鳥のようなあっさりした肉にタレをかけたものと、塩だけを振ったものの二種類が盛られている。どちらも旨い。食べ飽きることがないため、先程同様、手が止まらない。


「すげぇな。全然ペースが落ちないぜ!」

「いや、本当の地獄は最後に控えてらぁ」

「さすがにキツくなるだろなぁ」


「「おかわり!!」」


 通算5杯目だ。まだまだいけるな。


「ご主人様、明日どうなるのでしょう?」


 ここにきてルヴィに会話する余裕が出てきたらしい。ひたすら食べ続けていた事に気付いたからか、少々顔が赤くなっている。


「虚偽報告だった可能性が高いからな。なにもしなくていいかもな」

「もし嘘だったら、仲間が死んだのにギルドのことを考えてたってことですよね……私にはよくわかりません」

「あえて厳罰が科されるかもしれない事までしてってのは理解できないよな。その場合何に襲われて四人も死んだのか……そこが疑問になるんだが、明日になればわかるか」

「そうですね。悩んでも仕方ないことですね」


 ふと厨房へ目を向けると、看板娘が大きな皿を持ってこっちへ来るのが見えた。大皿には揚げ物が大量に載っている。最後はこれか。いいじゃないか。


「揚げ山! 最後だよ! 頑張ってねー」

「いい匂いですね。これもお酒が進みそうです!」


 口の中に入れると、サクサクとした荒い衣の感触が、ついで肉汁がジュワッと口の中に広がり、肉の味を存分に味わわせてくれる。香辛料のピリッとしたアクセントがそれを引き立てている。付け合わせの葉菜はみずみずしく、しっかりと噛めばほのかな甘みを感じる。


「お肉ばっかりでしたから、お野菜が美味しいですね」

「サラダでも頼むか。すみません! サラダ1つ!」

「うぇ!? は、はーい!」


 気付けば周りの客は勿論、厨房にいる料理人までこちらを見ている。


「まだ、頼むの、か」

「本当に全部食っちまうんじゃ……」

「まさかとは思うとったが、奢りかのう」


 ようやく自らの過ちに気付き始めたみたいだな。だが、遅すぎる。串山も今片付いたから、残るは揚げ山だけだ。ルヴィは相変わらず幸せいっぱいの顔で食べ続けているし、俺もまだいける。サラダをつまんでいれば飽きもこないだろう。


「はい! サラダ!!」

「じゃ、おかわり!」

「二つです!」


 おかわりが来るまでのつなぎとしてもサラダは最適だな。新鮮な野菜にサッパリとしたドレッシングが口の中をリセットしてくれる。これでまた揚げ物を美味しく食べられる。


「はい! おかわり!!」


 それから30分後に見事に完食した。茶色も緑も影も形もない。


「こんなに一杯食べたのは初めてです。とっても美味しかったですし、ご主人様、ありがとうございます!」

「毎日は無理だが、これからはたまに食べに来ようか」

「はい! ありがとうございます!」


 今まで見た中で最高の笑顔だな。しっかりとリベンジも果たせたし、ルヴィは満足してくれたみたいだし、これ以上は……奢らせないといけなかったな。


 振り返ってみれば皆、一様に驚愕の色を顔に浮かべている。あぁ、その表情が見たかったんだよ。さて……


「新参の我々に奢って下さるそうで」

「ご馳走になりました」


「う、うわぁーーー!!]

「ほんとに2人で全部食いやがった!?!」

「すげぇ新顔がきたもんだ!」

「かみさんに怒られるぜ……」

「ほっほ。酒場通いはこれだからやめられん」


 その後、帰ろうとすると常連に引き留められ、更に飲んで食った。来店二回目にして伝説を残したとか、もう常連も頭が上がらねぇとか色々と言われたが、店員も客もまた来いと言ってくれた。ルヴィ見たさってのもあるだろう。

 出る時にルヴィの尻を触ろうとしたエロオヤジには暫くお眠り頂いた。



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