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 シスカさんに言って、特別に朝食を弁当にしてもらって早朝の街道を歩く。いつもより門に詰めている騎士の数が多い。表情も引き締まっているように感じる。


 さっさと片付けて不安を払拭してやるか。


「ルヴィ、眠そうだな。大丈夫か?」

「だ、大丈夫です! あったかくて気持ちよく寝れました!」

「確かにあったかかったな。よく眠れたならいいけど、無理はするなよ?」

「はい、ご迷惑はおかけしません」



 襲われたと思われる場所を捜し始めて、かれこれ2時間になるが未だにオルトロスは見つからない。それどころか現場も見当たらない。


「ルヴィ、もう少し範囲を広げるか」

「そうですね。襲われた場所も見つかりませんし……」


 死体は魔獣なんかに喰われて残っていないだろうが、さすがに血痕や装備の一部は見つからないとおかしい。男は気が動転していて襲撃地点すらよく覚えていなかったのか?


「ご主人様。血の臭いが微かにします」

「どっちだ?」

「北のほうです」


 ルヴィは犬の獣人ほどではないが、人間よりは鼻がいい。言われた方角を捜してみると現場と思しき場所を見つけることができた。


 木や地面に血が飛び散っており、衣服や防具の破片、折れた剣が転がっていた。敵わないことを承知で迎え撃つしかなかったのか、血痕は少し開けた場所に集中している。凄惨な状態ではあるが、思いのほか綺麗だ。下草もあまり乱れていないし、木々の枝も折れているものは殆どない。あれだけの大きさの魔獣が暴れれば、もっと場が乱れているはずだが……俺が狩ったオルトロスより小さいものだったのか?


「ご主人様。本当にオルトロスだったのでしょうか?」

「あぁ、疑問だな。もっと荒れていると思うんだが」

「はい。死体しか見ていませんが、あの大きさならもっと……馬車やまわりの木も酷いことになってましたし」

「もう少し捜して見つからなかったら報告に帰ろう。確認すべきこともあるし」

「はい」


 昼を過ぎても一向にオルトロスは見つからない。すでに移動していることは十分に考えられるが、このまま闇雲に捜しても無駄だろう。もしかしたら別の場所で発見した報告がギルドに入っているかもしれない。


 街への道中も森の中を捜してみたが、出てくるのはグレーウルフやホーンラビット、ゴブリンばかりで、森の雰囲気も変わったところはなかった。門に詰める騎士に確認しても、発見報告も被害報告もないと言っていた。


 ギルドに戻ってみると、支部長は外出中とのことなので、帰ってくるまで併設酒場で昼食をとることにした。


「ルヴィエールさん! シラヌイさん!」

「マルちゃん」

「今から昼か? 一緒にどうだ?」

「はい! ご一緒します!」


 昼には遅い時間だがマルニエも昼食に出てきたようだ。元気ではあるが少し疲れているようだ。運ばれてきた日替わり定食をパクパク食べている。子供っぽいな。対してうちの食いしん坊は、上品かつ素早く食事を口に運んでいる。なかなかの妙技だ。


「今日は忙しいのか?」

「ゴクッ、んっ、そうなんです。今日はいつもより怪我される方が多いんですよ。オルトロスもいるみたいですし増えないか心配です。体調崩す人も多いのに困っちゃいますよ! おかげでこの時間までご飯食べられなかったんです!」

「大変だったんですね。体調もヒールで治るんですか?」

「ううん、魔術じゃ風邪とかの病気は治せないですよ。傷しかダメなんです。だから体調崩された方にはお薬出してます。」

「そうなのか。魔術も万能じゃないんだな。で、今日の怪我人にオルトロスに襲われたやつはいないのか?」

「いないですよ! いたらもっと忙しくなります!」


 無関係か……街から遠ざかるように移動したのか? もともといない可能性もあるにはあるが、さすがに見間違えないだろうし、嘘をついたってのもな……。



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