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 結局答えが出ることなく宿に戻ってきた。

 ただ、魔術的要因が絡んでいるのではないかという仮説が出たため、支部長が魔術に詳しい知人をあたってみると言ってくれた。あの中ではリスカが一番魔術に詳しかったが、全くわからなかったためだ。因みに、その知人はかなり長生きの人らしい。


「あ! 清算するの、忘れちゃいましたね」

「……しまった。明日は開門と同時に出かけなきゃいけないから、朝も払えないし」

「なかなか見つからなければ夜になっちゃいますね」

「あとで謝ろう。それしかない」

「ですね」


窓枠に腰掛け、星を見ながらライターを取り出し、火をつける。


 キンッ シュッ


 ふぅーーー


 煙草を吸うとルヴィが嫌というか、少々残念そうというか、そんな表情をするので最近は控えていたが、今日はいいだろう。濃い一日だったからまとめることも多い。


 俺達が呼び出された原因は、昼間にギルドに入ってきた血まみれの男で、問題のオルトロスに襲われたらしく、パーティーメンバー4人を失ったと聞いた。街道に比較的近いところで襲われたため、通商保護のために明日は朝一でオルトロスの排除にいかなければならない。


 昼間の男のパーティーは組んで日が浅く、連携がしっかりしていなかったらしい。そんな状態でパーティーリーダーが、比較的強い魔獣が出るエリアに行く依頼を相談なく受けたようで、反対しようにもランクアップが近かったためにギルドの印象を悪くしたくなくて無理だったようだ。依頼自体はなんとか熟したが、全員が傷を負い疲弊していた時に襲われ、逃げることもままならず、あの結果。因みにこの一件だけでなく、最近このパターンの事故が何度かあったらしい


 これを受けて、代表者がパーティーメンバーの同意なく依頼を受けることを避けるために、魔登録機の機能の一つであるパーティーリンク機能、通称、代表受注といわれるものが一時的に停止されるようだ。これは依頼の受注時に、代表者であるパーティーリーダーだけが魔登録機に刻印を読み取らせれば、パーティーメンバー全員が依頼を受注できる機能だ。つまり、早ければ明日から依頼の受注時にメンバー全員がその場にいて、魔登録機に手を入れる必要があるということだ。受付も混むし、非常に不便になるだろう。


 余談だが、オルトロス討伐を請け負った時も魔登録機酔いが発生した。例によって、魔力の流れをコントロールしてやるとすぐに収まったが。ルヴィも登録したての時は悩まされたと言っていた。5分ほど気持ち悪さが続く症状だったようだ。俺はかなりマシな部類みたいだ。


 煙草を消してベッドに入ろうとすると、いつも俺が寝ている側にルヴィがいた。


「あ、ご主人様。お休みになりますか?」

「ああ、明日は早いしな」


 顔を赤らめながら、ルヴィはもぞもぞと自分がいつも寝ている方へ動いていく。


「どうしたんだ?」

「その、ミコちゃんが寒くて体調を崩す人が多いと言っていたので……暖めておこうと思いまして」


 気が利き過ぎじゃないか? こんなにいい娘みたことないぞ。


「ありがとう。気持ちよく寝られそうだ」

「はい……あの、手をお繋ぎしてもよろしいでしょうか。あ、いや、その、少しでも暖かいほうがいいかと思いましてっ」


 俺の影がかかっていてハッキリ分からないが、顔を真っ赤にしていそうだ。こんなことを言ってくるとは思わなかった。ルヴィに誤解させるのも嫌だから、なるべく身体的接触は無駄にしないようにしていたんだが……無用だったか?

 いや、同じベッドでずっと寝といて言うのもなんだが……そういえば、部屋が空いたから二部屋とろうとしたら節約しましょうとかいってきたし、宿移ってツインのあるところにするか聞いたら、ご飯はここが美味しいし、シスカさん達もよくしてくれるからって説得されたな。

 薄々感じていたが……そういうことか? まぁ、そう思ってくれるのは嬉しいが……あぁ、返事が無くて不安な顔になってる。


「そうしようか。ルヴィにも体調崩してほしくないからな」

「はい! お気づかいありがとうございます!」


 そんなに嬉しそうにされるとなぁ……



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