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大方、謹慎処分を言い出されて俺が抗議でもすると思っていたんだろう。そこから話を広げて探るつもりだったのだろうが、あっさり受け入れてしまったために虚を突かれ、フォローもできないまま帰してしまったってところか。
「反応も予想外、調べても何も出てこない。そこにこの事態でいっそのこと直接聞こうって感じか?」
「あぁ、そうだよ。で、お前はなんなんだ? どこで力をつけた? なぜ、今になってギルドに入った?」
「俺は俺だ。わかってる、冗談だ。少し昔のことを話すから長くなるぞ?…………
まず、俺が何者かだが、登録時に書いたように出身地はよくわからない。生まれてから何かがあったんだろう。ずっと親だと思っていた2人は育ての親ってやつだった。三歳のころ森の中で衰弱してるところを拾ったらしく、何も身元に関する物はなかったと聞いた。だから、不明だ。ただ、この辺……いや、この国か? の出身ではないことは確かだ。理由は後で話す。
で、俺を拾ってくれた親はハンター、ここで言う冒険者だったんだよ。ひとところに腰を落ち着けられない性分だったな。そのおかげで全国を転々としながら暮らしてた。それに振り回され、大きくなると依頼に付き合わされ、おかげで何度か死にかけた。両親はかなり優秀な剣士と魔術師だったから、本当にやばくなると必ず助けてくれたが、それぐらいじゃないと怪我しても助けてくれなくてな……怪我をしたくない一心で徹底的に自分を鍛えたんだよ。
父からは剣術、体術、投擲術、あらゆる武術を叩き込まれた。相当な使い手に仕込まれたおかげで俺はかなり強くなったが、体の傷の半分はこの時についた。それぐらい厳しかったな………顔とか見えるところは避けてくれたが。
母からは魔術を教わったが才能がなかったのか全く扱えなかった。魔力を感じたり、コントロールしたりってとこまでは出来たんだが、発動の段階まではなぜかいかなかった。まぁ、この国と違って魔術が使える人間はほとんどいないところだったから、それで問題はなかったけどな。こっちきてから試したら簡単にできたんだよな……今思うと教え方が悪かったんだろうな。かなり感覚的なことしか言われなかったし、教えてくれたのは火系統だったから俺が使えなかったんだろう。
15のころには独り立ちして本格的にハンターとして活動を始めて、23でギルドのトップ3と言われるようになった。仕事の毎日で落ち着ける場所が欲しくて家を建てたんだ。そこでコーヒー飲んでて気づいたら、ここの森の近くの草原。裏付けなら、カターレン商会のテノンさんにでも聞いてくれ。まぁ信じられないだろうが。
そのあとはシランに来て、帰るために金を下ろそうとしてギルドによったが、組織が違うから下ろせなくて、家に帰る金を稼ぐために登録した。簡単に説明するとこんな感じだ」
ルヴィは真剣に、支部長は思案気に、リスカは必死にメモを取りながら聞いていた。
「そうか。まず、なんでここが出身でないと言える? あとで話すと言っていたが」
「あぁ、すっかり忘れてた。小さい頃から俺の国があった大陸中を転々として、大人になってからはもっと駆けずり回る毎日だったから、大陸の地名は大体知っているんだ。それなのに、こんなに大きな街の名前を聞いたことがないのはおかしいだろう? だからさ」
「つまり、別の……大陸から来たってのか? リスカ。別の大陸があるなんて知ってるか?」
俺も他の大陸があるなんて聞いたことはない。支部長もそうらしく、リスカに問いかけるが、直ぐに返事はない。
「いえ、このウィス大陸の他には島々があるだけとしか聞いたことがありません。まだ見つかってないだけかもしれませんが」
「シラヌイ。お前のいたところは島じゃねぇのか?」
「いや、それなりの大きさの国が4つあるところだ。島ではないだろう」
「つまり、海を越えた未知の大陸からやってきた、むこうのギルドのトップランカーってことか?」
「……そうなる」
自分で話していても意味が全くわからない。しかし、未知の大陸になぜか来てしまったとしか考えられない。信じられないが信じるしかない。
誰もが考え込んでいる。が、答えは出そうにない。




