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004

 

 テノンの言った通り馬車内はかなり狭かった。木箱や樽、麻袋が積み上げられている。


 馬車に乗ってから御者はライ、厳つい男はホーソ、女はディタと紹介された。再度挨拶をすると早速なにをしていたのか聴かれた。興味津々だ。期待が重いな。


 ~~~


「ねぇ。 頭、大丈夫?」


 ぐっ。

 多少変な目で見られる覚悟はしていたが……この女!こうもストレートに鋼の精神の繊細な部分を的確に打ち抜いてくるとは!

 でも、本当に、本当、なんだ。


「ディタさんッ! 申し訳ありません! シラヌイさん。こちらから話を」

「いえ。いいんですよ。自分が一番わかってるんです。有り得ないってことぐらい。はは」

「ディタ」

「睨むなって。 わ、悪かったよ。 あんまりにも突拍子も無いこと言うもんだから、その、つい、ね?」


 テノンに怒られ、ホーソに睨まれたディタが慌てて謝ってくる。


「大丈夫だ。 気にしないで下さい。 すぐ切り替える。 家が無くなっても冷静でしたし……」


 何の問題も無い。俺は大丈夫。頭は正常だ。ただ、家が消えただけだ。


「(家?)すみませんでした。 ほ、本当に大丈夫ですか?」


 黙って頷いておく。


「(頭のことは)ともかく、椅子とカップを持っていることの説明にはなっている」


 そう。大事なのはそこだ。厳つい男は頼りになるな。


「そうかもしれないけど……」

「わからないことはわからない」


 やはり厳つい男は頼りになる。


「あんたねぇ。 そりゃ、そうだけどね。 ま、他にどんな説明されても結局はあた」

「シラヌイさん! シランの街ですよ! ほら!ほら!」


 そんな取り繕わなくても……そういえば、さっき馬車とすれ違ったな。


 荷台の後部から顔を出して覗いてみる。


 石造りの城壁に囲まれた、おそらく円形都市と思われるものが見えた。なかなかの規模を誇っていて人口も多そうで栄えているであろうことが見て取れた。近づいて行くと、外敵からの攻撃にも易々とは屈さないだろう重厚な城壁は5m程の高さでどっしりと構え、正面には両開きの城門が開かれていることがわかった。4人の軽鎧を身にまとった兵士達が出入りを管理しているらしい。近くには馬も繋いでいる。


「なかなか立派でしょう? シランはこの地方の中核都市ですからね。 私の商会も、ここに本店を出しているのですよ。 商業ギルドの近くにありますから、是非ともカターレン商会を御贔屓に」


「そうさせてもらいます。 早速ですが、この椅子、買い取って頂けませんか?」


「なかなか良い品と見受けますが、私はこういった家具類の扱いをしておりません。ですので、適正な価格での買い取りは出来ません。 かわりに、知り合いに家具を専門に扱っている者がおりますので、そちらを紹介いたします。 あと、そちらのカップなら買い取ることができますよ?」


「では、カップをお願いします。カップしかありませんが」


「カップ一つだけですが、純白の白磁に精緻な紋様とかなりの代物ですので……少々色を付けまして、150レル、銀貨1枚と銅貨50枚でいかがですか?」


 レルという通貨単位で取引している国なのか。銅貨100枚で銀貨1枚か。ドル建てしたら幾らだろうか。価値のついでに物価も確認しておこう。


「この街の物価はどうなんですか?」

「物価ですか? 確かに商業都市で栄えているところですから、少々物価は他に比べて高いかもしれませんが、パンとスープにメイン1品の定食で銅貨10枚くらいです。1レル高いかどうかくらいですので、お気になさらなくても大丈夫ですよ」


 約15食分といったところか。それだけあれば安い宿なら1泊はできるだろう。椅子も売れば2~3日は何とかなりそうだ。


「旦那!そろそろです!」


 どうやら門に着くようだ。




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