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 ゴブリン退治から1週間がたった。シランには季節と呼ぶほどの気候の移り変わりはないが、少し寒くなる時期にあるようだ。その変化が微妙なため、ここでは単純に、寒い時期と呼ぶらしい。一定だった寒暖の差が変わり始め、不安定になってきている。なんとなく風も冷たく感じてくる。


 ルヴィの鍛錬の難易度を上げるのに伴って、一週間に最低一度は休日を設けるようにした。二日か三日の休みになると予想していたのだが、ルヴィの希望で今日まで休みはなしになっていた。ゴブリンコマンダーとの一戦で何か思うところがあったようだ。個人的にはここまで根を詰めなくてもいいと思うし、あの時の内容も悪くなかったんだが……まぁ、まだ余裕はありそうだから止めはしないが。

 現在は、休憩中のミコちゃんとギルドの酒場で昼食をとっている。


「そろそろ寒い時期ですから、体調に気を付けてくださいね」

「それでも、そんなに寒くならないんだろ?」

「そうなんですけど、この時期の変わり目が温度変化が一番激しいので体調崩す人が多いんですよ」

「ナークさんのところも一人体調不良とおっしゃっていましたね」

「そうだったな。気にするほどじゃないと思うけどなぁ」


 個人的な感覚としては、少し肌寒いかな?程度のものだ。疑問に思うのも仕方ないと思うが、ミコちゃんはやれやれ新参者はこれだからと言わんばかりに首を振っている。


「この辺の人達にとっては大きな違いなんですよ。現に体調を崩されている方が多いんですよ? それも例年より多くて、このまま増えると依頼の消化が少し心配になる程なんです。だから甘くみちゃダメですよ?」

「そうか。そう言われると……人が少ない、かな? ルヴィは大丈夫か?」

「私は大丈夫ですよ。もともとは寒いところの出身なので、これぐらいはなんともありません」


 あぁ、そうだったっけ。ルヴィから俺の個人的な話というか、経歴に触れてこないから俺もあんまり聞かないんだよな。いや、俺が聞くのを避けてるんだ。そのせいで、あまりルヴィのことは知らないな。お互いに遠慮しあっているんだろう。今日飲みながらそういう話をしてみようかな。


「支部長か副支部長はいるか!?」


 大声の元を探すと、ホールの入口に一人の騎士が立っている。騎士は赤いラインが入ったプレートメイルを身に纏い、それなりに上の身分に見える。彼は街の治安維持を主眼とした領主直轄の組織、騎士団に属する騎士だ。街を巡回しているところを見かけることは多いが、ギルドで見たことはない。何かあったのだろうか?


「あぁっ!」


 ミコちゃんが驚くのも仕方ない。最初に入ってきた騎士に続いて、二人の騎士が血に塗れた一人の冒険者らしき男に肩をかしながら入ってきたからだ。ホールは騒然とした雰囲気に包まれ始めた。受付嬢たちが慌ただしく動き始め、騎士たちを奥へ通した。


「酷いですね。大丈夫なのでしょうか?」

「いや、血に塗れてはいるが、よく見れば大した怪我は無さそうだった。命に別状はないだろう。怪我の処置は門で受けているだろうし」

「シラヌイさん、ルヴィちゃん! 私これで失礼します!」

「皿は片付けとくよ」

「頑張ってください!」

「ありがとうございます!」


 職場併設の近さはいいが、緊急時は大変だな。半分弱も残してミコちゃんはカウンターへ駆けていってしまった。


「ルヴィ、もったいないから食べていいぞ」

「えっ!? そ、そんなに物ほしそうにしてましたか!?」

「心配そうにしながらも目は釘づけだったぞ?」

「うっ……す、すみません。気を付けます……」


 そんなに真っ赤にならなくても十分わかってるから気にしなくていいのに。面白いからいいけど。


「食べないなら俺が食べるけど」

「いえ! 頂きます!」


 吹っ切れたな。


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