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 思っていたよりもゴブリンの数は少なく、引き渡しで集計された数は206体だった。

 今はギルド併設の酒場で、ナーク達スペイサイドと一緒に祝勝会の最中だ。


「シラヌっちは嘘つきだよ~! 基本的な魔術しか使えないって言ってたじゃん!」


 まだ一杯しか飲んでないにも関わらずロッカは大分酔っているようだ。なんなんだよ、その呼び名は。


「いや、サンダーレディエイションしか使ってないだろ?」

「む! あれはサンダーレディエイションじゃなくて纏雷てんらいでしょ! しかも武器に付与までしてたじゃん~!」

「纏雷? なんだ、それ?」

「ロッカさん、あれはサンダーレディエイションではないのですか?」


 全く意味が分からずにロッカに尋ねるが、意味が分からないという顔をしている。みれば他の面々も固まっているか呆れている。どうやら非常識なことを言ってしまったらしい。最近はそんなこともなくなってきていたんだが。


「シラヌイ。本当に知らないのか?」

「頼む。教えてくれ」

「……本気、なのか……烏はどこまで非常識なんだ。それに気付いてもいない。おかしい。絶対……おかしい」

「ロ、ロイグさんが長文を!?」


 マーティン。それは長文なのか? 普段から本当に単語でしか会話しないのか。雰囲気には合ってるからいいが……大声をだすことは、いや、出せるのか?


「あのね~シラヌっち~纏雷ってのはね~中級魔術のなかでも~難しい部類の魔術なんだよ~?


 酔っ払いの長ったらしく回りくどく間延びした解説を纏めるとこういう事らしい。


 纏雷は初級・中級・上級の中の中級魔術に分類され、その中でも難しいことで有名らしい。何故かというと、サンダーレディエイションの様に何も考えずに魔力を流し放出するのとは違い、体の部分部分で流せる精密なコントロールとそれを絶やさずに維持し続ける必要があるためのようだ。

 身体強化で部位ごとに使っているじゃないかと言うと、全く違うと言われた。身体の動かす部位を意識するのと感覚が全く違う的なことを滔々と語られたが、理解できなかった。大差ないと思うんだが……

 そして纏雷を武器等の体以外のものに発動させる(付与というらしい)ことはもっと難しいらしく、これは上級魔術に分類されているとのこと。


 だから~知らずに使うなんてありえな~いの~! 自分で応用していって、なんて異常~ずるい~おかしい~ず~る~い~!!」


 有益な情報は手に入ったが、非常に面倒だ。まだ二杯目を一口しか飲んでいないのにこれだ。ナーク達は全く口を挟まず流している。放っておくのが正解らしいが、ナーク、お前の女だろ。なんとかしろ。


「ご自分で上級魔術まで到達するなんて、ご主人様はさすがですね」

「さすが、とかそんなもんじゃないわよ。それで片付けられるなんて……しょうがないのかしら」


 うちの熊さんは三杯目を空けたところだ。ペシェがこちらをジトッと見てくるが、それは俺のせいじゃない。ルヴィが素直だからそういう反応なんだ。


「まだ一か月なんですよね。少しは自信があったんですが……自信なくしますねー」

「お前よか俺のほうがキツイぜ。初めて会った時から折られっぱなしなんだからよ!」

「そういえばそうだな。いやー悪いことしたなー」

「てめぇっ! これっぽっちも思ってねぇだろ!!」

「いいぞ~喧嘩か~? やれやれ~ナークはつおいんだぞ~!」



 もちろん喧嘩はせずに解散した。帰ってから反省会もあるため俺とルヴィは引き上げたが、スペイサイドはまだまだ飲むようだ。ナークが飲まないとやってられるか!と叫んでいた。




 ~side ナーク~


 あの強さは異常だろ。

 ルヴィは最初こそゴブリンコマンダーに押されていたが、途中から完全に自分の持ち味を活かして戦い始め、わざと戦闘時間を引き延ばしてすらいた。

 シラヌイのほうは最初こそあんまり動かなかったが、ゴブリンコマンダーが出てきてからは100を相手に圧倒し、士気の上がったゴブリン共を恐慌状態に陥らせ、逃げ出すまでに追い込みやがった。そのうえ取り逃がさないように立ち回って、逃げた奴らが俺らのほうへ来るように誘導しやがった。単身で戦いながらこんな芸当の出来るやつはAクラスでもそうはいねぇはずだ。少なくとも、今までに俺が見てきたどのAクラスよりも強かった。そのうえ余裕まで見せつけられた。


 負けてらんねぇ。


 これでもシランの冒険者共を引っ張ってくような立場なんだ。みんなも同じ気持ちらしい。


「もっと……」

「……そうだ」

「ええ」

「はい!」


「強くなるぞ!!」


「「「おう!!」」」 

「ぐぅ……う、うん? お~!」



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