033
門前に行ってみると既にナークのパーティーは揃っていた。大剣を担いだナークと魔術師のロッカ、片手剣に丸盾を装備した青年に、弓を背負った青年、ロッカが持っているような杖を持った女性の5人だ。
「おはよう。待たせたな」
「おはようございます。お待たせしてすみません」
こちらに気付いたロッカが手を振ってくる。
「おはよ~。全然待ってないよ~」
「おう、来たか。早速だが行くか」
「わかった」
早朝の門は冒険者や商人、街の住人たちでそこそこ賑わっているため、立ち止まっていると邪魔になる。そのため互いの自己紹介は移動しながらすることにした。
「こっちの片手剣のやつがマーティン」
「マーティンです。よろしく。ナークと前衛をやってます」
180cmの細身な優し気な青年だ。盾や要所要所を金属で補強した革鎧には細かな傷が多くあり、若いながら経験の豊富さがうかがえる。
「弓師がロイグ」
「……よろしく」
「無口なやつだが実力は確かだ」
マーティンより少し低いぐらいの背をした男だ。背には短弓と矢筒を担いでおり、眼光鋭い名狩人といった雰囲気を醸し出している。ホーソのように寡黙な男らしい。
「こっちは治療師のペシェだ。ちょっとした怪我なら気にしなくていいからな」
「ペシェよ。よろしくね、2人とも。私がいるからって油断して怪我しないようにしてね」
ブロンドの長髪を後ろでゆるく纏めたお姉さんタイプの女性だ。ペシェは170cm程で女性にしては背が高いほうだ。因みに、治療師がいるパーティーは怪我をしても助かることが多く、実力が高くなりやすいと聞いた。実際にナークのパーティーはシランでも有数の実力らしい。
「あとは俺とロッカにリブってやつがいるんだが、体調を崩してて今日は不参加だ。この6人が俺のパーティー、スペイサイドのメンバーだ」
5人じゃなくて6人だったか。体調不良のやつは前衛らしい。
「知ってると思うが、シラヌイだ。よろしく」
「ルヴィエールです。ルヴィとお呼びください。本日は皆さまから多くを学ばせて頂きます」
「ルヴィちゃん固いよ~。もっと気楽にいこうよ!」
「が、頑張ります!」
それからは街道沿いにゴブリンの巣があると思われるエリアまで、雑談をしながら進んで行った。俺がBランクになったことを知ったスペイサイドの面々が驚いたり、ルヴィが話した訓練内容に慄然としたり、ナークとロッカが付き合っていることに驚愕したりと互いの話をして打ち解けることができた。
「そろそろ目的地だ。役割はどうする?」
「先導は任せていいか? 道中の魔獣の対処をルヴィに見せたい。巣を発見してからは俺たちに一番槍を任せてほしい。元々ルヴィの対多数戦闘能力を見るために受けた依頼だからな。美味しいとこ取りで申し訳ないが、魔獣の引き渡し込みで報酬はこっちが四分の一ももらえればいいから」
「あら、四分の一でいいの? それに、巣の討伐は初めてなんでしょう? 大丈夫?」
「こっちもパーティーでの戦い方を見せてもらうから大丈夫だ。経験は無いがルヴィなら大丈夫だ。危なかったら俺が助けに入る」
「危なそうになったら僕達もすぐに助けられるようにしておきますね」
「ありがとう。ま、そうはならないさ」
「……グレーウルフ」
森へ入って数分も立たずに魔獣に遭遇か。おあつらえ向きに4、5頭で群れをなすグレーウルフで、早速スペイサイドの実力が見れそうだ。グレーウルフたちは前方からV字にやってきていて、こちらを左右から挟み込むつもりらしい。数は5だ。
「いつも通りの対処でいくわよ!」
「「おう!!」」
「期待の新人に俺らの力見せてやれ!」
「お~う!」