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「カティさん。この依頼受けたいんで、お願いします。あと、あいつらはほっといても大丈夫ですか?」

「あ、うん。さっき治療室に人を呼びに行っていたから大丈夫よ。それにしてもルヴィちゃん強いのね。分かってはいたけど、実際に見ると驚いたわ」

「私はまだまだですよ。ご主人様には遠く及びませんから」

「謙遜しすぎよ。う~ん、シラヌイ君の強さはよく分からないわね。私も受付長いから、それなりに人の強さはわかるんだけど……隠されるとさすがにね」

「積極的に隠してるわけじゃないんですけど、そう簡単には分からないでしょうね」


 最近知った事なんだが、カティさんは20代前半にしか見えないのに実年齢36らしい。エルフという長命で老い難い種族の血が入っているそうだ。最初は君づけの呼び方に抵抗感があったが、なるほど、さもありなんと納得した。


「そういえば、ここで武器を抜いてもいいんですか?」

「ダメよ。魔術も武器もダメ。自衛のためなら仕方がないけどね。それでも殺しちゃダメよ? 2人とも気をつけなさい。あと、出来れば何事も穏便に済ませて欲しいわね」

「わかりました」

「申し訳ありませんでした」

「手入れて」


 魔登録機に右手を入れ受付処理を完了する。

 ん? なんか気持ち悪いな。一瞬不快感を感じたが、いつもと同じ魔力の流れに整えると消えていった。これが前に聞いた魔登録機酔いってやつか。なんでも刻印が完全に定着するにはひと月かかるらしく、それまでは魔登録機の使用時に気持ち悪くなったり、痛くなったりするらしい。ミコちゃんの名誉のために言っておくと、些細なことなので特に説明しない方針だそうだ。確かにこれぐらいならどうでもいいだろう。


 受付処理が終わり、受付を去ろうとした時にパタパタと走る音が聞こえてきた。治療室の治療師が駆けつけてきたようだ。真っ白な神官風のローブの様な物を着た小柄な女性だ。綺麗な長い金髪を振りながら負傷者を探してキョロキョロしている。


「あ! ルヴィエールさんにシラヌイさん! こんにちは!」


 あどけない少女にしか見えないが、これでも彼女はギルドの治療師だ。以前ルヴィが怪我をした時に一度お世話になっただけだが、すっかりルヴィになついて、会うたびに元気良く話しかけてくる。優しくて大きいからか?


「こんにちは。マルちゃん」

「相変わらず元気だな、マルニエ。怪我人はあっちとそっちとあそこに転がってるぞ」

「ありがとうございます! すぐ治療してくるので少し待っててもらえますか?」

「そこでお茶しながら待ってるよ。コーヒーでいいか?」

「はい! ありがとうございます!」

「砂糖は?」

「4つで!」


 併設の酒場のテーブルについてコーヒーを頼み、マルニエが来るのを待つ。

 光系統の魔術師は適性がそれ一つである事が殆どで、他の魔術は使えないが全系統中唯一治療魔術を行使することが出来る。そして適性者も多くはないため貴重な人材となっている。彼女もその一人で、この支部にいる四人の治療師の中で一番腕が良い。こうしている間にも2人の治療を終え、三人目に取り掛かっている。手早く怪我をした箇所を探し出すと、患部に手を近づけ治療を開始する。


「ヒール」


 手から発された光が患部を包み込むと、内出血して青黒くなった皮膚が正常な肌色に戻っていく。この光景は何度見ようとも驚嘆してしまう。折れたり切れたりしていると治療には時間が掛かるが、それ以外は早く治すことが出来るらしい。


 怪我の治療が終わったようでトコトコとこちらに歩いてくる。チンピラ三人は放置されたままだ。


「全く、おバカさん達が絡んでいって返り討ちにされたんでしょうけど、もっと穏便に平和に話し合えないんでしょうかね。絡まれた方も絡まれた方ですよ。素手でもこっそり身体強化かけてたらダメなのに!」

「ごめん!」

「申し訳ありませんでした!」


 運ばれてきたコーヒーに砂糖を溶かしながらきょとんとしている。


「え? え? シラヌイさんがやったんですか!?」

「あ、いえ、私が」

「……え? ルヴィエールさんなんですか? そうなんですか。しょうがないですね。でも、もうギルド内で魔術使っちゃダメですよー」

「いや、使ってないぞ?」

「はい、使ってないですよ?」


 マルニエどころか隣のテーブルの女冒険者も驚いている。灰熊族は力が強い事を皆知らないのか? それに、見てれば魔力の流れで魔術行使の有無なんてわかるだろう。


「す、すごいです!! 強化なしで全員パンチ一発でノックアウトなんて! さすがルヴィエールさんです! カッコイイです!」

「あ、ありがとう? マルちゃん」


 さっきまでプンプンと怒っていたのに、ルヴィがやったと分かるとこの変わりようだ。それでいいのか、筆頭治療師。





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