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 暫し待つとミコちゃんが帰ってきた。見事に涙目だ。可愛い。


「支部長が来いって言ってました! 部屋は分かりますよね! 今朝ですもんね! 私は行かないので勝手に行ってください!!」


 捲くし立てて奥に引っ込んでしまった。気持ちはわかるが、受付を空にすると先輩受付嬢たちに怒られるんじゃないか?


「受付に誰もいませんがよろしいのでしょうか?」

「きっと怒られてすぐ出てくるんじゃ……ほら」


 ペコペコしながら奥からミコちゃんが現れた。完全にしょげてしまっている。可愛い。


「さ、支部長に会いに行こうか」

「はい……なんだか可哀想です」



 三階の少し豪華な扉をノックしようとしたら不機嫌さ全開の声で入れと言われてしまった。


「朝方ぶりです。俺だけではないのでその威圧感引っ込めてもらえませんか?」

「ちっ、そうだったな。座れ。生存者は彼女だけと聞いたが」


 当事者である自分が話すべきと判断したのかこちらを見てきたので頷いて先を促す。


「はい。ルヴィエールと申します。私たちは雑貨などを積んだ馬車と私を積んだ2台の隊商でした。突然魔獣の咆哮が聞こえて、少しの間速度を上げて逃げていたのですが衝撃を受けて私は気を失っていました。そこをご主人様に助けて頂きました」

「ふむ。人数は?」

「私を除いて9人です」

「シラヌイ。回収は?」

「してますよ。9人全員」


 こういったことはよくあるのか淡々と必要最低限の情報だけを聞いてきた。


「ふぅー……さて」


 一息つくと俺を睨んでくる。やめろって。ルヴィが驚いてるだろ。


「何に襲われていた?」

「頭が2つあるデカい茶色の犬でした」


「「は?」」


 2人の声が見事に重なっている。確かに大物だとは認識しているが、2人して眼を丸くさせるほどか?


「わ、わたしはそんなものに襲われていたのですね……ご主人様!本当にお助け下さりありがとうございました!!」

「シラヌイ。そいつも回収してるんだな?」

「ええ。で、なんて奴なんですか?」

「オルトロスだ。この辺じゃあ滅多に見かけない奴で、Aランクの魔獣だ。マイヤーのとこ行って引き渡して来い。お前の処分は考えておく」

「な、なぜご主人様が処分されなければならないのですか!?」

「それはな……こいつが今朝Cランクになったばかりで、暫くは大人しくしてるって言ったばかりだからだよ! どうしてくれんだ! お前がいなけりゃ全員死んでたからそこは感謝するが、こっちはただでさえ特例でランク上げたんだぞ! 面倒ばかり起こしやがって、俺の仕事が増えるだろ!!」


 そんな理由かよオッサン。確かに迷惑かけてるが、せめて理由はもっとマシなのにしろよな。


「ご、ご主人様は今朝方Cランクになられたのですか……?」

「そう。支部長。御迷惑をお掛けしました。ですが、こんなことはそう何度も無いでしょうから、暫くは本当に大人しくしておきます。失礼します」

「絶対だぞ? 明日の朝、顔を出せ。それまでに考えておく。ほら、さっさと行け」


 なかば追い出されるようにして支部長室を出て倉庫に向かう。


 さて、マイヤーさん探してなるべくコッソリ処理してもらうか。遅かれ早かれ知られることだろうけど、支部長のためにも目立たないようにしたほうが良いだろうし。まだ早いから倉庫にも全然人がいないな。


「マイヤーさん」

「おう。シラヌイか。早くもCランクになったそうじゃないか」

「ええ、おかげさまで。引き渡しお願いしたいんですが、端のほうでコッソリお願いできますか?」

「なんだ? また下限ランク無視したのか? まあいい、こっちだ」


 倉庫の奥の大きな骨が積まれた一角に隠れた場所へ案内される。ここならそんなに目立たないだろう。


「……お前。これは……その背中ので一撃か?」

「そうです。隊商が襲われていたので不可抗力で戦っただけですよ」

「まともな人間は一人でオルトロスなんかと戦わねえよ」






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