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021

 両肩に背負うタイプの吊り具を調整してもらい烏羽を背負って森の中へと入って二時間ほど。木々の生い茂る限られた空間の中でも大した支障もなく振り回せるようになってきた。ホーンラビットには何羽か出会ったが切れ味を試すには小さすぎたので、烏羽の刃を展開することもなく柄で叩き潰したり、石突きで刺し貫いたりといった刃を使わない動作の習熟に終始してしまった。本来の使い方はサーベルドッグあたりで試すことになりそうだ。


 グゥオォォオォォオーーー!!!!


 かなり距離が離れているが、聞こえてきた方角は街道が通っていたはずだ。急いで確認に行った方がいいだろう。しかし、ここまで余裕で響かせる大音声か。かなり大物がいそうだな。運が良い。


 無系統魔術をバランスよく行使し全身を強化して全力で向かう。全力での慣らしは十分では無いため、力に振り回されることが度々あったが、数分で街道に出ることが出来た。


 200m程先には、木に馬もろとも押しつぶされた馬車とそれに衝突して動けなくなった馬車が見える。走り寄りながらサンダーアローを5発同時発動し牽制射を行うが、最後の生き残りであろう護衛の男が頭を喰いちぎられ死んだ。


「チッ、間に合わなかったか……」


 元凶は全高2,5m程の犬頭を2つ持つ茶色の巨獣だ。口のまわりや、幹の様に太い足先の鉤爪が血に塗れ真っ赤に染まっている。奴の周囲にはわかるだけでも無惨に喰われ、裂かれた亡骸が6体も転がっている。


「グルルルゥ」


 完全に殺る気のようだ。こちらもそれは望むところで問題は無いが、確実に支部長室に呼び出されて説教コースだ。こいつはペラペラの魔獣図鑑には載っていなかったからランクがわからないが、確実にCランクが単独で対処するレベルを凌駕している。遺体を持ち帰れば少しは事情も理解してもらえるだろう。


「おっと」


 双頭が前半身を屈めると強烈な蹴り出しで瞬時に距離を詰めてくる。すれ違いざま先程と同じように凶悪に生えそろった牙で頭を狙い噛みつき。


 ガチン!


 サイドステップでギリギリの距離を保って躱すと同時、刃を展開した烏羽を右手で持ち、下から掬い上げるように体を捻りながら斬り付ける。チッ、遅い!


 シュ! ドサ


「ガアアァアァァ」


 もう少し烏羽に慣れていれば後脚を落とせたが、尻尾を断つにとどまってしまい非常に怒らせてしまった。今度は前脚を使った打撃と引き裂きを行ってくるが、がむしゃらに振り回すだけで知性の欠片もないような攻撃だ。


 ドガッ ドガッ ドガッ


 躱す度に地面が少しずつ抉れ割れていくが、そこに脅威は感じない。単純な体格と力の強さのみで生きてきたのだろうという思いが浮かぶと同時、一気に冷めていく。肌の数センチ先に死をもたらす一撃が幾度となく通っていくが、一切興味を惹かれない。ここでの初めての大物に期待しすぎたようだ。


 ドガッッ ドガッッ 


 自分より小さな存在に攻撃を当てられず更に苛立ちを増してきている。威力は高くなっているが、隙も多くなっている。完全に俺が双頭をコントロール出来る状況ができあがってしまった。このまま続ければ我を忘れて大暴れをして予測がつき難くなるだろうが、もう十分だ。楽しめないなら終わらせるしかない。


 右脚をつき、右の口を閉じた瞬間に一気にキルゾーンを抜け、大人1人が十分に立っていられる双頭の顎下に潜り込む。強化した両手で持った烏羽を双頭の首を刈り取るように振るう。


 ドドッ   ドウゥゥン


 強化込みだが両首を落とすことが出来た。つまらなかったが烏羽の試し斬りには十分な相手だっただろう。切れ味は全く問題ないことがわかったし、帰ったらお安くしてくれたオーヘンさんに礼を言わないとな。街道が血で溢れる前にインベントリにしまうか。遺体も回収しないとな。馬車も見てみないとな。木で潰れたほうの馬車は馬も御者も死んでいるのはさっき見えたから、比較的ましなもう一台から見ていくか。





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