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015

 

 チリンチリーン


 16時から夕飯の提供が始まることになっているが、少々早いために客はひとりもいないため、すぐにシスカさんが気付いた。ちょうどカウンターを拭いているところだった。


「おや、おかえり。ケガは無さそうだね。よかったよかった」

「シスカさん、ただいま」

「初依頼で疲れてるだろう? 少し早いけど食べるかい?」

「ええ、お願いします」

「座って待っときな。話聞かせておくれよ」


 人が少ないうちに話を聞きたくて勧めたのか?


「お待ちどう。少しオマケしといたよ」

「ありがとうございます」


 今日のメニューは黒パン・サラダ・スープは変わらず、メインが魚のステーキだ。ステーキが郷土料理なのか? オマケは木製のジョッキに入ったビールだ。ありがたい!ジョッキが木製のため色はよくわからないが、きれいな白い泡だけでもうまそうだ。


 ジョッキを傾け常温の液体が喉を通るたびに疲れがとれていくようだ。雑味も多いが、ほろ苦さの後に微かな果物のような甘さを感じ十分においしいといえる。


「依頼はなに受けたんだい?」

「常時依頼の薬草採集とホーンラビット討伐ですよ……受付嬢に嘘教えられて薬草は見つかりませんでしたけどね」

「それは災難だったね。明日また稼げば大丈夫さ。もしダメでも少しは待ってあげるから、がんばんな」


 災難。全くその通りだ。根の近くの色は普段は赤だが、この時期になると紫に近い色になるそうだ。ナークがいなけりゃ明日もダメだったかもしれない。そのあとはナークに説教されて本日二度目のへたれ耳だ。


「いえいえ、薬草以外は大丈夫でしたよ。ホーンラビットも20羽にサーベルドッグも狩れましたし」

「そりゃ本当かい!? ケガどころか服も汚れてないから、てっきりダメだったのかと思ったよ。悪いねぇ。それにしてもサーベルドッグなんて恐ろしいもんをよく倒したね」

「犬に剣が生えただけですから、大したことはありませんでしたよ」

「頼もしいねぇ。でも調子に乗っちゃあダメだよ? 油断したら死んじまうから、ちゃんと気をつけるんだよ」

「はい。気を付けます。ギルドでも言われましたから」


 あの後は暫く説明した結果、ナークの「飲んでたとはいえ、俺を一瞬で沈めたんだから、まぁ、おかしくもないだろ。」という一声で収まった。早いとこナーク並に信用されたいところだ。毎回あんなに騒がれるのは面倒だしな。とはいえ、サーベルドッグはなかなかおいしい獲物だったから今後も偶然且つ頻繁に出会いたいものだ。


 今日の成果は、ウサギ20羽で銀貨一枚とサーベルドッグ1頭で銀貨五枚の合計600レルで、宿12泊分だ。魔術の訓練もできてこの稼ぎなら悪くない。


「おかわりはいるかい?」

「お願いします。あとベーコン炙ったやつも追加で」

「あいよ」


 節約のために昼を抜いた影響でいつもより腹が減ってる。門の近くで屋台が軒を連ねていい匂いさせて誘惑してくるのに必死で今日は耐えたが、明日からは我慢しなくていい事を考えると随分気が楽だ。


「まず、おかわり置いとくよ。ベーコンはもう少し待っとくれ」

「どうも。昨日のステーキみたいなのとかあります?」

「兎肉をタレに付け込んだ奴があるよ。食べるのかい?」

「お願いします。あとパンも追加で」

「朝から思ってたけど、あんたホントによく食べるねぇ」

「よく言われるんで、最近はこれぐらいで抑えてるんですけどね」

「あきれた子だねぇ。ま、うちで沢山食べてくれるのは大歓迎だけどね。持ってくるから待ってな」


 空腹にオマケのビールが呼び水になって、結局50レル分も飲み食いしてしまった。まんまとシスカさんの策略にはまったのかもしれないな。


 明日は絶対に薬草採取依頼を達成してやろう。




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