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あかりの記憶
「私ね、憎くて憎くて堪らない男がいるんです。」
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それに気付いたのは、幼稚園に入学したばかりの頃。
友人達にからかわれるほど仲の良い両親。あかりはそんな両親が大好きだった。両親の後をよくついて回っていた。
だから、気付いてしまった。時々、本当に時々。仲の良い両親の間に不穏な空気が流れることに。
けれど、1日経てばすぐに元に戻った。
もの凄く不安だった。もの凄く嫌だった。嫌だったが、原因のわからないあかりは、気付かないふりをした。無意識のうちに事を大きくしないようにしていたのかもしれない。
けれど、そんなあかりの思いを踏み躙るように年々、微かだった不穏な空気が大きなものとなり、流れる回数も増えていった。
【それも、兄の成長とともに】
小学生になったあかりは、ある日ある男に会った。
そう、全ての元凶のその男に。