あかりの負け
結果から言うと、あかりの負けだった。
何度もシュートはするが、広樹に邪魔されて完璧なシュートは一つも打たせてもらえなかった。
「私の負けです。でも、一つだけ教えて。どうしてただ通りかかっただけの私をバスケに誘ったんですか?私たち初対面ですよね?」
「僕が君の存在に気が付いたとき、君はこちらを見て嫌悪していたけれど、それ以上に羨ましがっていたように見えた。」
あかりは動揺して、声を荒げた。
「嘘つかないで!私はバスケが大嫌いなの!そんな訳ないでしょ!」
それに答えず、広樹は自分の話をした。有名父親のこと。親戚のこと。バスケの才能のこと。時々それらから逃げてここでバスケをしていること。
「だから、君を見たときに思った。君も僕と同じように純粋にバスケを好きなだけではいられないのかなって。」
あかりは何も言えなかった。
「予想は当たってたみたいだね。君はそんなに上手いのにどうしてバスケを拒絶するんだい?女子でそこまで上手い子ははじめてみたよ。」
「なんでそんなこと初対面のあなたに言わないといけないんですか〜、言うわけないでしょう」
「いやぁ、僕勝ったんだけど…」
「あっ」
あかりは少しきまりわるくなって俯いたが、諦めたように顔を上げて話はじめた。
「私ね、憎くて憎くて堪らない男がいるんです。」