広樹とあかりの勝負
「何か僕に用かな?それとも一緒にバスケやる?」
そう言われてあかりは戸惑った。なぜ見ず知らずの人間にいきなりバスケしないかなど誘うのだろうか。
けれども、無視するのも失礼なので答えた。
「悪いけど、私バスケ嫌いなので遠慮します。練習頑張ってください。それでは。」
そう言って去ろうとしたが、その人はしつこく誘ってきた。それに苛立ったあかりはつい言ってしまった。
「私が一回でもあなたからゴールを奪えたらもう二度と私をバスケには誘わないし、バスケの話を振らない、できれば視界に入らないで。」
その人は驚いて目を見開いたが、
「いいよ。その代わり、君が一本取るより先に僕が20本入れたら、君は僕の話を聞くこと。そして僕の質問に答えて。」
それにあかりは、
「いいですよ。」と言ってしまった。
さて、普通に考えたら、素人目に見ても上手い男の子とただ通りかかった女の子では勝敗は明らかだった。
けれど、あかりには自信があった。あかりはバスケ未経験者ではなかった。
父は中学高校とバスケをやり、全国大会で優勝したこともある。今現在でも、中学のバスケ部の監督をしている。
母も中学高校とバスケ部マネージャーをし(ちなみに父と母が出会ったのは高校バスケ部だったらしい)、時々練習に混ざるほどのバスケ好きだった。今は有名な選手を取材したり、バスケ関係の記事を書いたりとバスケにかかわっていた。
その上、あかりの兄の智は小学生のからずっとバスケをしていて、周りに天才だと言われるほどバスケが上手かった。
そんなバスケだらけの家族に囲まれていて、あかりがバスケが下手なわけがなかった。