~狩~
満足いく物が書けた。と、思います
かび臭い臭いが僅かにする薄暗い四畳程の部屋の隅で黒いマントのようなもので 身体を包みうずくまっている二つの塊、
一つはかなりの長さの剣を抱きしめるようにうずくまっており、もう一つは一回り程小さく、うずくまっている方に横からしがみつくようにして寝息を発てていた。
僅かに入ってくる日の光でアルクの意識は覚醒した、目を見開き、周囲に意識を向け、視線を辺りにさまよわせる、己の得物を強く握りしめながら。
その様は何かに怯えているようにも見える。
周りに危険がないことが分かると武器を握る力を緩める。その瞬間ドッと汗が噴き出す。
起きる度アルクは嫌になる位 自分の小ささを思い知らされる。
怖い。
戦場では傭兵等人間として見られない、突撃を命じられ、囮にされ後ろから撃たれる事もあった。
戦場に味方はいない…
只、孤立感に支配され寝ても起きても緊張を張り巡らしていた、今もそれは変わることはなくいつくるか分からない死の恐怖に怯えていた。
「…じいじ…」
視線を下に落とせば寝息を発て、自身にしがみついて居る少女。
自嘲気味にアルクは笑った、あの時この子に殺されてもいいと思った自分なのに 今はこんなにも、
死ぬのが怖い。
何処までも弱く醜い自分がただ悔しかった。
「…メシ…」
しがみついたままよだれを垂らして幸せそうに眠る少女。
その寝顔を見ているだけで少し救われたような気がした。
いつの間にかアルクは笑っていた。その顔に自嘲の色は消えていた。
*
それは日も高く治安が悪いといってもそれなりの人が行き交う街に突如、炎の雨が降り注いだ。
たちまち街は地獄絵図とかし、逃げ惑う人々を容赦なく焼き尽くしていく。
一人、雨をかいくぐりながら街の外を目指し疾走する者がいた、降り注ぐ炎をかわし、時には家の中を走り雨をやり過ごして、只走り続けた、その背には振り落とされまいと必死にしがみつく少女がいた。
アルクは直感で感じていた…
此処にいたら生き残れない…
アルクはその衝動に突き動かされるまま、街の外へと危険を省みず突き進んだ。
この街に城壁等と云う立派な物はない。昔はあったで在ろうなのこりの残骸が僅かにあるだけだ。街の外苑部まで来れば荒野が広がっているのが見渡す事が出来る。
外苑部に到着したアルクは此処に着くまでに少なくない傷を負っていた。
降り注ぐ雨をかわしきれず、直撃を避ける為に左腕に受けた傷は酷く、黒く焦げ付き生臭い黒い煙りをあげている。
顔の右半分も焼けただれ右目は塞がっている。
そして残った左目で荒野を埋め尽くす軍の群れを憎々しげに睨んでいた
「…じいじ」
背中で縋るように呼ぶ声にギリリと歯を食いしばり視界を埋め尽くす敵に向かい走りだす。
絶対に生き残る!
残った左手に長剣を握りしめ何かを隠すように、いびつで歪んだ笑みを浮かべながら。
に負けるスピード。