~狂気~
遅い投稿、これがぼくの最大出力です!ごめんなさい!
追っ手が途絶えて人里離れた所を回る必要が無くなり、近くの少し大きな町に入った。大きな、と言っても長い内戦のせいで治安は悪い、警備等ザルである。
治安が悪い事は悪い事ばかりではない。アルクのような傭兵にはあちこちに仕事が転がっている。
殺し、護衛、盗み、警備、まさによりどりみどり、アルクは片っ端から依頼を受けその全てを成し遂げた。勿論無傷で済む訳はなく、体中に傷を刻んだ、そしてその依頼の全てに少女は付いて来た。
治安の悪い町中で少女一人でいる危険を彼女なりに分かっていたのかもしれない。
アルクは少女が居ようがいまいがどちらでも良かった。ただがむしゃらに目の前の敵を殺した。
少女は返り血を浴び、悲鳴や命乞いの言葉を聞き、そして傷だらけになるアルクを見ていた。腹を斬られ、腕を斬られ、血を流し、血を吐き、時には雄叫びをあげ何かを振り払いながらもがく青年の姿を。
少女が武器をとるのに時間はさほど掛からなかった。転がっているナイフを拾い丁度背を向けている男に飛びかかり背中えと突き刺す。
幾度も見てきた殺しかた。ただ 刺せばいい、動かなくなるまで。
アルクは血まみれで倒れる男に長剣を突き刺しながら少女へと視線を向けた。
*
今回はレジスタンスの掃討依頼だ。
無駄な正義感を持った者たちの集まり。ムシャクシャする。怒りのような物を感じて感情のままに斬り掛かる。
途中までは良かったがスレイヤーが出て来てからは分が悪い。戦場でも思い知ったが奴らは人間というには異常だ。
その斬撃は早過ぎて真空波を巻き起こし、斬撃を防いでも弾き飛ばされる。
戦闘に入ってから致命傷は防いでいるがこのままでは殺られる。
視線を巡らしどうにか勝機を見いだそうとしてきずいた事がある、この男はアルクが連れてきた少女を庇いながら戦っている。
怒りが混みあがってくる。今まで手加減されながら手も足も出せなかった自分に、そしてその唯一の弱点に漬け込むしか自分に勝機がない事実に。 アルクは雄叫びを上げながら攻撃は少女を狙った物へと変わり男は少女を庇うように背を向けアルクの攻撃をいなした。いなしきれずに少なからず傷を付けはじめたが、合間あいまに飛んで来る斬撃にアルクの方が多くの傷を受けた。
一度退くか…弱点を付いても勝つ事ができない自分に怒りを覚えて血が出るほどに歯を食いしばる。
強悪な一撃で跳ね飛ばされ距離が開いた所で男に庇われていた少女がゆらりと動き、後ろから男に飛びかかった。
いつの間にか持っていたナイフで背中を一突き、腕で振り払おうとした男の肩に一突き、男が動こうとした所に素早く体を動かし太ももに一突き。そのまま倒れた男に狂ったようにナイフを突き立てた。
*
血で赤く染まった少女は荒い呼吸を繰り返しながらナイフを握りしめ、ピクピクと僅かに動く男の上に跨がり泣いていた。
アルクは残等を荒かた片付けてあれだけ刺されたにも関わらずまだ微かに息のあるスレイヤーに長剣を突き刺し留めを刺した。
「ひっく、うあぁぁ、」
ただ少女は泣いた、声をかみ殺そうとしてそれでも声がもれでた。
アルクは少女を改めて値踏みした。
例え背後からで油断もあったとはいえ、少女の動きは以上だ。相手はましてやスレイヤーだ。それをたった一人で殺した、こんな子供が…あまりにも危険過ぎる。
長剣を握る手に力が入る。
「じいじぃ、ひっく!じいじぃ、」長剣を握るアルクを縋るように見つめ呼ぶ少女は先程の狂暴性を感じさせない。
アルクは膝をおり血や涙や鼻水でぐしょぐしょになった少女の顔を布切れで乱暴に拭った。
アルクは少女の姿を自分に重ねて見ていた。生きる為、守る為に必死になって武器を振るった自分に。
この少女をこうしてしまったのは自分だ。
アルクはそう思った時、この少女になら殺されてもいい、と覚悟を決めた。
「じいじぃ、じいじぃ!」
顔を拭っている間も泣きながら呼ぶ少女に
「俺はアルクだ。お前はこれからアリスだ。」
少し泣き止んだ少女は、アリス…アリス!と急に元気になりアルクに飛びついてきた。
*
流石に血まみれでうろうろする事も出来ないので自分と予備に持っているマントをアリスに着せて宿へと向かった。
「じいじ!飯!」
笑顔で空腹を訴えるアリスはどこにでもいる元気な少女だ
…俺はアルクだ。