忘れられた夢の話【1400字】
僕は、よく夢を見る。
今日の夢は、ある男性視点だった。
大学の帰りだろうか。何人かの友達と一緒にキャンバスと思われるところから出てくる。
その後、家に帰る風でもなく一晩中遊んでいた。
まずは、カラオケに行って、暗くなったらディスコで踊る。
その後は、居酒屋で今の政治について酒を飲みながら福田に任してられるのやら、大平がいいのやら、まるで一人前の評論家のように何時間も話しあう。
だが、不思議と何をやっているんだろうという気持ちはおこらなかった。
むしろ、みんなとこうやって遊んだり、語り合ったりすることが楽しいと感じていた。
これは夢かもしれないし、過去の体験なのかもしれない。
だが、なぜかそれを判断することはできなかった。
そんなことを考えているうちに1つの夢は閉幕を迎えた。
次に見た夢。
視点としては…女性の会社員だろうか。
上司の社員に仕事の方法を教えてもらっていた。
ただ、その上司は時々、セクハラを私の視点となっている女性に対して行なっていた。
その不快感、そして新しい仕事に対する緊張、様々な気持ちが僕の中に流れ込んできた。
この感情、間接的に受けているぼくですらこれだけの感傷にさらされるのだ。
本人が感じているものは想像もつかないであろう。よく耐えられるものだ。
その日は、昼までの勤務だったらしく、昼の時点では全員が仕事に区切りをつけていた。
しかし、だれも帰ろうとはせずに談笑をしたり、片付けなどをしていた。
その理由は、12時を5分ほど過ぎてから来た男性の一言によってもたらされた。
「みなさん、勤務お疲れ様でした。
ここから、2,3分歩いたところに用意をしてありますので部長に案内をしてもらって下さい。」
その言葉を聞いて社員の何人かが花見が楽しみだと高めのテンションで話していた。
だが、女性から感じる感情にプラスの感情はない。むしろ、不安、嫌悪感、ストレスが感じられた。
(これは、面倒なことになりそうだな。)
そんなことを考えているうちに一行は花見会場に到着した。
「それでは…乾杯!」
社長の号令によって、花見という名の宴会は始まる。
全員で10数人弱。多いとも少ないとも言えない微妙な人数だった。
5分もしないうちに、視界がふらふらしてきた。
どうも、ぼくの視点となっている女性はアルコールに弱いようだ。
だが、そんなことはお構いなしに宴会は進んでいく。
30分ほどした所で社員の1人がこんな提案をした。
「新入社員3人に景気づけに一気飲みをしてもらおうぜ。」
その提案に、テンションが上がっている他の社員たちが反対するはずもなく、否応なしに3人にジョッキ一杯のビールが渡される。
僕の視点となっている女性からは飲みたくないという感情が止めどなく流れてきた。
だが、この雰囲気がそれを許さない。
社員たちの期待に耐えかねて彼女は一気に流しこむ。
その行動に対して拍手が上がるものの、その音が聞こえてこない。
そのまま5感からの情報を失い、意識はわずかな光となって海の底へ沈んでいった。
その後、彼女は目を覚まさなかった。
今思い出したのは、この2つの夢だけ。
他にもたくさんあったはずなのにフィルターがかかったように思い出せなかった。
だが、僕はそれを無理に思い出そうとはしなかった。
もう時間であると誰に説明されるわけでもなく理解できたからだった。
「次は……かな。」
最後に僕はつぶやく。
しかし…そろそろ思考がまとま…なくなって…た。
言…が失…わ………
それから、約10分後、ある病院で1つの命が生まれた。